長期連休明けの今日5月7日、毎日1時間半かけて大阪の本社まで電車で通勤する生活がとうとう始まってしまいました。実は4月から既に大阪に転勤になっていたんですが、本社の移転の作業などがあったために、4月の1ヶ月は京都の支店にそのまま居候させてもらっとったわけですが、GW中に全ての移転作業が完了しまして、本社に私のデスクもできてしまったんです。今まで通勤は車で10分だったんですが、これからは毎日90分の通勤をしないといけません。朝、家を出る時刻は単純計算で80分早くなります。
まだ通勤経路も決めていませんし、定期券も買ってません。阪急にするかJRにするか。バスを使うか地下鉄を使うか。これから思考錯誤して決めることにしてます。ちなみに今日は家を出るのが6時40分になってしまったのでJRを使いました。7時14分発の新快速です。首都圏ほどではありませんが、それなりに混んでました。やっぱり遅くても阪急電車にしようかなあと思うております。河原町から乗れば絶対座れますからねえ。
連休明け初日の今日は、GW中に200件くらい電子メールが溜まってるやろなあと覚悟して会社のPCを開いてみたんですが、意外なことに30件ほどしか未読メールはありませんでした。しかもほとんどがそれほど重要な内容ではなく、気合いを入れて会社に行ったのに拍子抜けです。午前中にちゃんちゃんと仕事を済ませて、定時に帰宅しました。
そういう訳で今夜も時間がありますので、昨日に続いてTCC2012の内容について少し書いてみたいと思います。
今回、被災地の宮城県を旅しまして感じたことの1つに地元の人々の「おもてなし」の心があります。これは宮城県の人がそうなのか、東北の人がみんなそうなのかはわかりません。また大震災の被害に遭われたからそうなのか、あるいは震災前からそうなのかもわかりません。でも、今回のツアーで私たちが出会った宮城県の人の全てに「おもてなし」の心を感じました。全ての人に感じたわけですから、これはたまたまとは思えません。
最初はツアー2日目に鶴岡から鳴子温泉までの行程の最後の部分です。国道沿いの峠の手前にある古いドライブインの食堂がありまして、ヘロヘロになってるN君が休憩したいというので寄ることにしたんですわ。たいていはこういうお店の前には自動販売機がおいてあって、店に入らなくても、飲み物だけを自販機で買ってそのへんに座って休憩できるんですが、何とここには自販機がなかったんですわ。
店の外から中をちらっとみますと、冷蔵庫にポカリスエットと緑茶のペットボトルが冷やしてあるのが見えました。食堂の中で買いますと、だいたいの場合ちょっと値段が高い場合が多いんですが、疲れて飲み物が欲しい状況ですので値段が高くても買うしかありません。食堂に入りました。
「これ、いただいていいですか?」
ポカリスエットを取り出して、レジに持って行きました。値段を聞きますと100円やと言わはります。自販機より安いがな。100円を出して店を出ようとしますと、
「お食事は何にされますか?」
ええっ、ポカリだけ買うて店出るいうのはあかんのかいなあと思いまして、
「これだけでいいんですが、何か食べないとダメですかね?」
こう聞きますと、店の人は
「いえ、そんなことはないですよ。よかったら中で椅子に座って飲んで行って下さい。」
14時過ぎだったんでお客さんもいなかったせいもありますが、食堂の中で椅子に座ってポカリを飲ませていただきました。
ちょうど従業員の人も昼休みでランチを食べるタイミングでしたんで、自然と会話が始まります。旅の話、京都の話、この地域の話・・・ポカリ1本で20分くらい話が盛り上がりました。御礼を言いまして店を出ようとしますと、これを持って行けと渡されました。
ポカリ2本買って、黒飴1袋ももらったんではお店は損ですがな。申し訳ないんで断ったんですが、どうしても持って行けと言われるんでいただいて帰りました。
ツアー3日目は鳴子温泉から気仙沼までの115kmを走る予定でした。ところが朝からの強い雨のため、午前中で走るのをやめて電車で気仙沼まで行くことに決めたんです。ところが最寄りの東北本線の駅までの道をどうやら間違えたんでしょうなあ。道に迷ってしまいました。田園地帯の雨の中、少し大きな軒のある家をみつけて、その軒下に座りこんで地図を広げて見てますと、そこの家の人が出てきはったんです。
「どうかされましたか?」
最初は勝手に家の前に座り込んだりして怒られるんかなあと思ったんですが、そうではなかったんです。
「雨が強いので、中に入られたらどうですか?タオルはお持ちですか?」
とんでもありません。勝手に他人の家の軒を借りてて申し訳ないなあと思うているところですから、頭下げてお断りしました。ただ地図を見るより最寄駅までどう行ったらええか、この人に聞いた方がええやと思うて
「ここから一番近いJRの駅に行きたいんですが、どう行ったらいいですか?」
と聞きました。すると、雨が降るのにわざわざ家の中から出てきてくれはりまして、行くべき道を指差して、丁寧に説明してくれました。きつい雨が降っているのに本当に申し訳ありませんわ。全身ずぶぬれで泥だらけになってるのを気遣ってくれまして、タオルを持ってくるやら携帯カイロを持ってくるやら言うてはりましたが、これはさすがに断りました。
泥だらけになりがならも、東北本線の石越という駅に着きましてJRに乗り継いで気仙沼駅に着きますと、雨はさらにひどくなってます。宿までの距離はたかだか2kmなんですが、とても運転できる状況じゃありません。安全は全てに優先しますので、ここは自転車を駅においてタクシーで宿まで行くことにしたのですが、問題はずぶぬれで泥だらけの服装ですわ。この状態でタクシーは私たちを乗せてくれるのか。京都の駅前のタクシーやったら2kmくらいの距離でこの状態なら絶対乗車拒否でっせ。でも気仙沼のタクシーは快く乗せていただけました。しかもせっかく気仙沼に来ていただいたのにこんなひどい天気になって申し訳ないとか言うでひたすら謝りはります。天気悪いの運転手さんのせい違うのに・・。
宿に着きますと、当たり前ですがまだずぶぬれのどろどろの服装ですわ。ところが宿のおかみさんがすぐにタオルを用意してくれてお風呂まで案内してくれて、たっぷりの水を含んだ上着を洗たく機で脱水までさせてくれました。そして先ほどのタクシーの運転手さんと同様に「こんな天気になって申し訳ない」を繰り返します。この精神が信じられません。
この旅館は津波で1階が完全にやられたそうです。もう旅館業は廃業しようと決めたそうですが、復興関連の業者が宿泊するために畳と布団があって寝られるだけでいいから続けて欲しいと言われて素泊まりのみの営業をしているそうです。1泊4000円ですわ。食事は敢えて用意しないそうです。理由は復興屋台村というのが近くにありまして、そこでいろんなものを食べてもらって全国からのお客さんを呼びたいというのがあるそうです。我々も屋台村に行きました。
1軒目に行ったのが「気仙沼ホルモン」。ホルモン自体は普通ですが、ニンニクがきいたタレが特徴でおいしいです。またお店のスタッフが元気いっぱい。底抜けに明るいんです。「がんばろう東北」ってよく書かれてますが、十分がんばってるなあって気がします。
2軒目には同じ屋台村の中のマグロの店に行きました。ここも店のマスターが底抜けに明るい。申し訳ないがマグロ自体はどうってことない普通のマグロですわ。でもがんばってる感がすごい伝わってきます。メニューも工夫されてます。1軒目もそうでしたが、全力でお客さんをおもてなししてるって感覚がわかるんですよ。
翌日も朝から雨です。チェックアウトをしましたが、この雨では駅まではタクシーが必要です。宿のご主人に駅まで戻りたいのでタクシーを呼んで欲しいとお願いしますと、何とご主人はこう言います。
「駅まででしたらお送りさせていただきますよ。こんな雨で申し訳ありませんので」
雨はご主人のせいと違うて言うてるのに・・・。申し訳ないけどお言葉に甘えて駅までお送りいただくことになりました。靴を履こうとしてびっくり。前日の雨の中を走ってたっぷり水を含んでいた靴は、中に1つ1つタオルが詰められておりました。前夜に屋台村で飲んで帰った後にご主人がタオルを詰めておいてくれたんです。信じられない気づかいです。
気仙沼まで送っていただいた私たちは8時40分発の一ノ関行きの電車にのるために自転車を分解してバッグに詰める作業をしておりました。ところが気がつきますと電車が動いてないんですわ。
雨の中を自転車で走らないといけないのかなあと思っておりますと、JRの職員さんが「振替輸送」についての説明がありました。
みなさん、振替輸送って知ってますか?都会に住んでますとJRが止まったら私鉄に乗れるチケットをくれるみたいなイメージでしょ。私もそうでしたわ。
ところが地方ですとJRが止まれば私鉄はありません。当然バスでの振替輸送かと思いますでしょ。それがそうではないんです。気仙沼から一ノ関までバスなら2時間くらいかかるんです。一ノ関から東北新幹線の指定席を買って人はタクシーで送ってもらえるんです。もちろんタクシー代はJR負担です。それ以外にも合理的に急ぐ事情のある人はタクシーで送ってもらえるんです。何と親切なこと。
我々はと言いますと急ぐ訳ではないですし、また自転車はタクシーに積めませんからね。バスを利用させていただくことにしました。ある意味JRに乗るより贅沢です。バスの方がいろんな風景を楽しめるわけです。
ここでもすごい心遣いを見ました。このバスに同乗しているJR東日本の職員さん、この朝は避難所から出勤されてるんです。ニュースでご存じの方もおられるかも知れませんが、前夜の豪雨で気仙沼市の一部の地区には土砂崩れの「避難勧告」が出されてるんです。私たちが宿泊している宿にも「避難勧告」が出されてまして、近くの中学校に避難するように言われたんです。私の携帯にも気仙沼市からメールが来ました。
JR東日本の職員さんは避難所で一夜を過ごして、朝から振替輸送に伴う顧客対応をされてるんです。バスが出発する際にもお客さんの前で深々と頭を下げられました。
「本日は大雨による大船渡線の運行見合わせによりまして、皆様には多大なるご迷惑をおかけしましたこと、誠に申し訳ございませんでした・・・」
雨はJRさんのせいやない言うのに、宮城の人は全部自分たちにせいにするんやろか。こんなセリフはこの日何回も聞いとります。
この後、石巻の宿でも宿のみなさんに丁重なおもてなしを受けております。正直言いまして、ここに来るまでは被災地のイメージってもっと活気がなくて暗いもんだと思ってましたが、実際は全然違いました。自宅も仕事も全て失って仮設住宅に住まわれている方なんかはまた事情が違うんでしょうが、多くの人は苦しい環境の中でいきいきと頑張っておられました。
よく芸能人なんかが被災地へ行ってライブなんかやって、「被災地の皆さんを励ますつもりで行きましたが、逆に被災地の皆さんからたくさんの勇気と力をいただきましたー」って言うてはりますでしょ。TVで見てると「そんなアホな。何言うとんねん」って思ってましたが、実際自分が行ってみると同じようなこと言いたくなるのようわかりましたわ。みんな私たちの想像以上に元気出して頑張ってはるんですわ。時間はかかるかも知れませんが、必ず東北は復興すると確信しましたわ。