最近の若い人はあんまり新聞を取らないそうですなあ。インターネットがこれだけ普及した今、世の中で起こっていることの“概要”くらいでしたら、どっからでも入ってきますからねえ。別に新聞を取らなくてもやっていけるっちゃあやっていけますわ。
我が家はそうではありません。日経新聞なんてカッコいい新聞はこっから先も読みませんが、地元の新聞「京都新聞」は購読しております。
インターネットって、意外とローカル情報は少ないんですよ。京都新聞を取っている一番の理由は「ローカル情報」。近所の家に泥棒が入ったとか、近くでこんな交通事故があったとか、非常に身近な話題に触れることができます。あとは小さなイベントや会合の案内もあります。そういうのを見て、予定のない週末なんかにはちょっと出かけてみたりするんです。全国紙に「週末に東京でこんなイベントがありますー」って言われたかて、ほなヒマやしちょっと行ってこよかとはなりませんからなあ。ネットで取れない身近な情報が欲しくて購読してますわ。
私が新聞を取っているもう1つの理由。それはは「折込チラシ」なんです。これ、ワクワクしませんか?
他の都道府県や地域はどうか知りませんが、うちの地域に関してはどんでもない量の折込チラシが入ってます。一番多いのが土曜日。不動産屋さん、車屋さん、家電屋さんを中心にして、新聞本体よりも重たいくらいの量のチラシが届けられます。マンションにしても車にしても家電にしても、休日に家族と一緒に見に行くものですからね。土曜日に入れるのが効果的なんでしょう。これらは仕事帰りにちょいとお店に立ち寄って買って帰ることはありません。
みなさんもお気づきでしょうが、曜日によってチラシが入る業界が決まってるんです。上に書きましたマンションや車や家電なんかは理由がようわかるんですが、例えば学習塾や家庭教師などの教育関係、美容やサプリメントなど健康関係はほとんどが水曜日に入ってます。また求人のチラシはほとんど日曜日です。
そして今日のテーマの「スーパーマーケット」のチラシは、どういう訳か火曜日に集中してるんですわ。なんでですかね。私がスーパーの店長なら、あえて他のスーパーとずらして入れたりも考えますけどね。
うちのエリア。自宅からチャリ圏内(約1km)にスーパーは7つもあります。実際はもっとありますが、わざわざ買いにいく可能性がゼロのところを除くと7つでしょう。あえて全部書きますよ。「ライフ」「生鮮館なかむら」「フレスコ」「メッサ北野」「ジャンボなかむら」「ニッショーストア」「アイハート」。このうち2つの「なかむら」と「フレスコ」「メッサ」および上に書いてない(チャリ圏内ではない)「マツモト」のあわせて5つについては、毎週火曜日に必ずチラシが入ります。一方、最大手の「ライフ」は火曜日のこともあるんですが、水曜日や木曜日にチラシが入ることが多いように思います。
チラシのコンテンツですが、火曜日、水曜日、木曜日の3日間の日替わりの特売品の紹介ですわ。5つのスーパーは全て火曜日にチラシを入れますが、特売の商品を火・水・木のどこに重点を置くかについては、それぞれに思惑があるんでしょう。「卵」とか「牛肉」がポイントになってるような気がします。
「たまご1パック88円。先着500名様、お1人様1パック限り」
だいたいこんな感じです。これを火曜日に持ってくるところもあれば木曜日にもってくるところもあります。牛肉についてもそうです。どこかの曜日に「半額セール」みたいなのを入れてることが多いです。
具体的な事例で見てみましょう。昨日24日火曜日の「まつもと」「メッサ北野」のチラシの1面です。
大手チェーンの「まつもと」
基本的に火曜日に勝負をかける方針です。こちらは京都市内、郊外に中心に8店舗を展開する準大手です。「土日で家族で車に乗って買い物に来る客」がメインになりますから、どうしても火曜日に売上が落ち込むそうです。そこで土日に買った食材がなくなるちょっと手前の火曜日にもう1回客を呼びこんで、水・木・金の食材を買わせようという狙いかと思います。言ってみれば先ヅモですわ。
集客の目玉の「たまご88円」「ほうれんそう97円」「鶏むね肉29円、モモ肉68円」を、火曜日にまとめてバンバンバンと持ってきてます。裏面の写真は載せませんが、逆に25日の水曜日はカレー粉とかドリンクとか生鮮食品でないものを目玉として紹介してます。
それに対して「メッサ北野」はこんな感じです。表面と裏面の両方をのせます。
このスーパーは「マツモト」と違って、車で買いに来る客をターゲットとしてないのが特徴です。多くの客は基本的にその日に必要な分だけを毎日買いに来ます。そういう意味では「マツモト」とは基本的に競合しません。
火曜日のトップには牛肉を持ってきました。半額以下は魅力です。そして裏面。25日は先着700パックで「たまご98円」、26日もタイムサービスで夕方4時から「たまご98円」を仕掛けてます。基本的な方針は「毎日少しずつ目玉商品を出して、客を継続的に来させる」ということにあるように思います。
さて、私の疑問です。「マツモト」のような車で来ることを前提にしている郊外型のスーパーは別として、チャリ圏内で毎日買い物をする一般の主婦の方は、どれくらいチラシを参考にしてスーパーを使い分けてるんかということですわ。火曜日のチラシを見比べて、たまごはこのスーパー、牛肉はこのスーパー、野菜はこっちでみたいなこと、1日に何軒もスーパーをハシゴしてるんでしょうか?私はようしません。
確かに全く同じ品質のものが、一方で100円、もう一方で90円なら、安い方に走りますよ。でも生鮮食料品の場合全く同じ品質ということはありえないと思うんですけどね。たまごなんかはまあほぼ同じ品質と言っていいかも知れません(それでも店によって大きさが違いますよ)けど、肉や魚はスーパーによって全然品質が違うと思うんですわ。
これは同じ24日火曜日の「フレスコ」のチラシです。
「鶏のモモ肉68円」をイチオシにしてますが、これは「マツモト」「メッサ北野」と全くと同じと言っていいですよね。裏面の「ムネ肉29円」も「たまご88円」も「ほうれん草98円」も他のスーパーと比較したら、たかだか10円以内の差なんですよ。これが1日にたまごを20個も30個も使う家だったり、鶏のから揚げを毎日1kgも2kgも揚げる家なら別ですよ。がんばってスーパーをハシゴして走っておられる主婦に方には失礼ですが、私は店舗間の「価格」の差は店舗間の「トータル品質」の差に比べたら無視できるほど小さいもので、スーパーのハシゴは意味ないと思うとるんですわ。
では「トータル品質」の差をどう評価するか。これは個々人がすべてのスーパーで買い物をして、どう満足するかしないかで決めるしかありませんわな。
私の中では、チャリ圏内の7つのスーパーの評価の序列は決定してまして、それぞれ使い分けてます。悪い評価のスーパーのことを書くと、営業妨害やとかいうてまた何か問題が起こってもいけませんので、普段から一番愛用している「アイハート」についてだけ、高く評価している理由を書かせてもらいます。
このスーパー「アイハート」。他のスーパーとちょっと戦略が違ってユニークなんです。基本方針は「常連客だけでやっていく」という姿勢に見えます。つまりは会員制なんです。
別に会員にならなくても、商品は買えるんですよ。でも500円の入会金を払えば会員様用ポイントカードを作ってもらえます。
ポイントカードなんかどこのスーパーでもやってるでしょって言いたくなりますが、それが非常に工夫されたカードなんですわ。店のコンセプトは「差別」。会員様と非会員様に対する待遇を全然違うものにしてるんです。
上の写真を読んでもらえればわかると思うのですが、まず「つり銭システム」。これは例えば798円の買い物をしたとしますでしょ。そこで1000円札出すと、おつりは202円。この100円未満の釣銭がカードにためて、実際のおつりは100円玉2枚になるんです。そしてカードの中に2円が加算されるんです。901円とかで1000円札出すとおつりはもらえません。99円がカードにたまるんです。そしてカードにたまった累積釣銭が2000円に到達したら2500円の金券がもらえるんです。
500円得するのも確かにうれしいですよ。それよりももっとうれしいのが、レジで精算した時に累積釣銭が2000円を超える瞬間に、「パンパカパーン!」って派手な音がなって、スタッフから「おめでとうございまーす。つり銭達成でーす」って、大きい声で祝福してくれるんです。近くで並んでる全然関係ない一般のお客さんからも「おめでとう」の声がかかるときがありました。ありましたと過去形になってるのは、実は2年前にレジを改装してから派手な「パンパカパーン」の音は出なくなったんですわ。周りの注目を浴びて恥ずかしいっていうお客さんの声があったみたいです。でも今でもレジのスタッフは祝福してくれます。
500円の得もうれしいが、この祝福が何ともうれしい。早く釣銭をためるために、できるだけ100円未満のおつりが多くなるように買い物をするんですがうまくいきません。
もっとようできてるのが「ショッピングマイレージ」。会員と非会員で「差別」をすると書きましたが、これは会員の中でもランク付けをしようというものです。
1か月の買い物金額合計が20000円を超えると、次の月は「クローバー」の資格が与えられます。30000円を超えると「スペード」。40000円を超えると「ダイヤ」、50000円超えると「ハート」と、会員の中でも前月の買い物金額合計によってヒラからハートまで5つのランクに格付けされるんです。そうして資格に応じて、買い物金額の2~5%がカードの中にキャッシュバックされる仕組みです。累積キャッシュバックが2500円になれば、2500円の金券と交換してくれるんですわ。つり銭同様に祝福してくれます。
何がようできてるかといいますと、毎回レシートに「今月の買い物金額合計は16000円。あと4000円でクローバーです」みたいなコメントが書かれてるんですね。これが月末の28日くらいなら、あと3日で4000円を買い物しようという気にさせるんですわ。資格がUpしたらUpしたで、次の月にその資格を維持したいという気持ちが働いてしまうんです。人間ってけったいな生き物やなあと思いますが、こうなると他のスーパーで浮気できなくなるんですわ。
これがアイハートのチラシです。
チラシ言うても新聞に折り込みで入っているものではありません。このお得情報チラシは「アイハート」で買い物した人しかもらえないんです。もちろんこれとは別に1か月に1回くらいは新聞の折り込みにチラシが入ることがあるんですが、それはあくまでも限定的です。月刊スケジュールなんかは、月末に買い物した会員さんだけにレジで渡されます。
会員だけの特典はいろいろあります。月に1~2回ですが「会員様限定。全商品10%引き」ってのはあります。全商品1割引きって結構大胆でしょ。
鶏肉なんかは会員様に限りレジで3割引きってのもよくあります。あと面白いのが、会員様はレジで抽選箱からクジを引かせてもらえる日があるんです。クジの結果によって肉や野菜が10%~30%の割引になるという企画です。ワクワク感がありますわな。
じゃあ、なんでこんな会員特典がある「アイハート」の会員にみんなならないかですわ。
理由は簡単。他のスーパーに比べて取り扱ってる商品がちょっと違うんです。他のスーパーで扱ってる商品よりも品質が良くて価格が全体的に若干高めなんです。もちろん他のスーパーに売ってるような安い商品もおいてます。でも売りは「若干の高品質」。品質で他のスーパーと差別化を図ってるんです。
「商品の品質」の差だけではありません。「トータル品質」なんですね。つまりは会員様に楽しく買い物をしてもらおうという工夫が随所の見られます。
普通スーパーって、精算を済ませたらカゴをもってレジ裏の台にいって自分でレジ袋なりマイバックなりに詰め込むでしょ。このアイハートは詰め込みを全部レジスタッフの女の子がやってくれます。レジ袋に詰めてもらってる間にいろいろと話ができるんですわ。これで会員さんをガッチリ掴んで離さないという作戦やと思います。おかげで8名ほどおられるレジのスタッフのほぼ全員と気軽に話せるまでになってます。
対面販売の肉屋のにいさんもそうです。ちゃんと会員さんを覚えててくれて、前を通りかかると
「まいどおおきに。今日はまた暑いねえ。焼肉でビールはどうですか。今日安いでー。」
まあどうでもええ会話ですけど声をかけてくれます。ええ肉が安い時なんかは積極的勧めてくれます。また逆にこっちも苦情っぽいことも気軽に言えます。単に商品を買うだけでなく、昔の商店街で買い物をするかのようなイメージで楽しめるんです。
あとこのスーパーは変な商品をちょいちょい置いてます。例えばマヨネーズ。
もちろんキューピーとか味の素のマヨネーズも他のスーパーと同じような価格でおいているんですよ。たぶんどっかのTVや雑誌で話題になった商品やろうと想像するんですが、そんなことを書かずにさりげなく置いてあるとうかっと買ってしまいそうな気がしますわ。
この時期に京都で食べる風習のある京野菜の「鹿ケ谷かぼちゃ」なんかも2つだけですが置いてあります。1個1500円もするんですよ。普通のスーパーは置きません。
どの業界でもそうやと思いますが、価格だけの勝負ではお店は差別化できないと思います。商品そのものの品質での差別化は一番重要ですが、人を含めた「トータル品質」ということを考えて商売しないと生き残っていけないと思いますね。