既に京都に帰ってきておりますが、沖縄の旅の続きを書きます。
首里城と識名園を見学して国際通りでぼらぼら買い物をしまして荷物が増えましたので、荷物をおくために一旦宿に戻ってチェックインすることに。前回ここに書いてますように、昼間のオーナーが不在の時間帯に、無断で宿にあがって大きいキャリーバッグを置かせてもらってますので、ちゃんとチェックインの手続きしてお詫びをせなあきません。
ところがです。16時30分に再度宿に行きまして、ピンポンを押しても誰も出てこないんですわ。また大きい声で「こんちわあ」と3回くらい叫びますと、リビングの奥にあるお風呂から。全裸のオッサンが前だけをタオルで隠した状態で出てきました。ビックリですわ。
「あっ、○○さんですね。すいません。今お風呂入ってるんです。荷物はちゃんと2階の3番の部屋に入れてありますので、そのまま階段あがってください」
遅くなるかも知れんって言うてたんで、まさかこの時間に来るとは思うてへんかったんでしょうな。
2階のお部屋にはちゃんと荷物が入れてありましたわ。4部屋だけのちいさなホテルというかペンションというかゲストハウスというか、なんとも言いようのない宿なんですが、お部屋はそんなに窮屈感もなく非常に清潔できれいなお部屋でした。どうやら宿はこのオーナーのオッサンが1人で運営しているようで、他にスタッフらしい人はなし。
とりあえずはオッサンが風呂からあがってくるまでチェックイン手続きもできないんで、お部屋でネットを駆使して良さそうなお店を検索します。
お友達からの沖縄情報と食べログの口コミをもとに総合的に評価して、この日に行くお店の候補を3つにまで絞りました。あとは実際にお店に出向いて、外観からの判断で入るお店に決定することに。
30分ほど経過したので、そろそろオッサンも風呂からあがっとるやろと思って下に降りていきますと、オッサンがどこやら電話しながらパタパタ動いてはりました。
「留守中に勝手に荷物を置かせてもろてすいませんでした」と言いますと、オッサンの方も「お風呂から失礼しました」と言わはります。チェックインみたいな手続きは不要とのことでしたんで、さっそく晩御飯に出かけようと思うたのですが、我々が候補に考えてる3つのお店、もしかしたらオッサンが知ってる可能性がありますんで、念のために聞いてみました。
「このあたりでどっかオススメのお店ってありますかね?」
そしたらオッサンはこういいます。
「ありますよ。ちょうど今から友達とそのお店に飲みに行くのですが、一緒に行きますか?そのお店はいろんな方に紹介してますけど、文句を言われたことは一度もないですので、きっと大丈夫だと思いますよ。」
そしてこんな名刺を渡されました・。
「今からすぐに行かれますか?もし今すぐでよければ車に乗ってってください」
玄関の外を見ると、別のオッサンが。おそらく一緒に飲みに行く友達なんでしょうな。車で飲みに行って帰りは代行運転で帰るつもりやろか。もともと我々もすぐに飲みに行くつもりでおりましたんで、お言葉に甘えてお供させてもらうことに。
「さっき電話があって、もう間もなく到着するお客さんが1人いますので、その人が来たらでかけることにしましょう」
そらそうやわな。チェックインするお客さんをほっといて飲みに行くわけにはいきませんわな。
それから1分もしないうちにオッサンの携帯電話に電話がかかってきました。たぶんそのお客さんからですわ。会話の中身を直接聞いたわけではありませんので正確なことはわかりませんが、どうやらそのお客さんは言うてた時刻にちょっと遅刻するみたいな雰囲気。ごちゃごちゃと何やら話をして電話を切ったオッサンが私にこう言います。
「お客さんは遅れるみたいですから、もうほっといて出かけましょうか」
ええんかいな。ちゃんと部屋に入れるようにしてあるって言うけど、沖縄では家に鍵もかけずに飲みに出かけても大丈夫なんやろか。
オッサンの友達の車に乗せてもらいまして走ること10分ちょっと。お店に到着。写真は帰りに撮影したものですので暗いですが、着いたのはまだまだ明るい時間帯です。
カウンターに案内されますと、ボトルキープしてある泡盛とグラスと氷と水が手際よくぽんぽーんと出されます。水はペットボトルの1リットルのパックがそのまま2人に1本ずつ出されます。実は泡盛というものは学生の頃にちょいと飲んだきりで、しかもちょいと苦手なイメージがありますので、できれば泡盛以外のもので沖縄料理を楽しみたかったんですが、この時点で泡盛以外の飲み物を注文できる雰囲気ではなくなってます。
お料理の方は京都のおばんざいみたいに、こうやってカウンターの上に並べてあるものを注文するんです。
1つ1つを単品で注文することもできるんですが、常連さんはみんな3種盛りという注文をしはります。こんな風にちょっとずつ3種類を盛り合わせてくれるんですが、この量を見てもらえばわかりますように決してちょっとではないですよ。
沖縄料理のことは何も知らないので、「おまかせ3種!」って言うて出てきたのがこの3種。左はパパイヤの炒め物、真ん中は昆布の和え物、右はからし菜とアゲのたいたん。本物の沖縄料理の味付けは意外とあっさりしてて食べやすかったですわ。塩分も控えめやと思います。
これはラフテー。いわゆる鐚の角煮ですわ。これは絶品です。
こういうものを食べながら泡盛というものを恐る恐るなめるように飲んでみますと、意外や意外。これがまた料理によう合うんですわ。もしかしたら京都に売ってるようなものとは違う上等の泡盛なんかも知れませんな。泡盛そのものが美味しいというよりは、泡盛を飲んだ後に飲む“水”がすごく甘く感じて美味しいんです。最初から水で割って飲んだらアカンのですよ。そして何種類かの泡盛をいただいて気がつきましたが、度数の高い方が圧倒的に水が美味しく感じます。これから泡盛に挑戦される方は覚えといてください。
さて、この宿のオーナーのオッサンと、車でここまで連れてきてくれたオッサンはどういう関係なんかいなあと聞きますと、中学の同級生だそうな。このオッサン2人だけやありません。お店のおかみさんももう1人のスタッフの女性も同級生やって。
「何十年もずっと仲がいいんですね」
こう聞きたんですが、それが知りったのはつい2年ほど前だそうな。当時の学校は1学年1200人以上いて21クラスもあったそうで、当時は全然覚えてないって。若いうちはみなさん九州や東京や海外で仕事をしてて、60歳を過ぎて続々と沖縄に戻ってきて、そこでSNSなんかで同級生に知り合って飲み友達になったって言うてはりました。この後に登場する後期高齢者のオッサンも同じことを言うてましたが、沖縄の人は良くも悪くも人と人とのつながりを大切にするそうで、困っている人がいたら必ず助け合うんだそうです。
その助け合い精神。こんな場面も。
この宿のオッサンの携帯電話にまた電話がかかってくるんです。今度はお客さんやありません。ソファーを買ったけど大きすぎて玄関から中に入らないとかなんとかいう話が聞こえます。このオッサンは家具屋もやってるんかいなあと思うて、電話が切れてから聞いたら全然関係ない話ですわ。
電話の主は75歳のオッサンの飲み友達。現役時代は日本では誰もが知ってる超有名大企業の沖縄支店長をやってた人で今は年金生活者なんですが、一人で暮らすのにソファーをリサイクルショップで買って配送してもらったけど、玄関から中に入らなくて困ってて、何かええ方法ないか相談の電話を宿のオッサンにしたそうな。このオッサンは引っ越しとか家具の匠なんかなあと思うたらそうではない。オッサンのアドバイスは「そのソファーを返品してもう少し小さめのソファーに替えてもらいなさい」っていう誰でも思いつくソリューション。こんなことわざわざ友達に相談せなアカンことかなあと思いますけど、その返品の仕方とか細かい打ち合わせまでしはるんです。電話主の75歳はアホなんと違うやろかと最初は思うたんですがそうではなくって、若い子らがどうでもええ話をツイッターでつぶやいたりLINEで会話するのと同じ感覚で、高齢者は電話で話したりリアルに会って報告しあう習慣があるんだそうです。我々以外のお客さんもそうでしたが、飲んでる途中で携帯に電話がかかってきて、その場でしゃべってる人はたくさんいてましたよ。
宿のオッサンにもその後何度か電話があって、結局その75歳のオッサンもお店に来るっちゅうことになりました。我々と一緒に飲むことに。こられるまではソファー問題でアホと違うかと思うてましたが、失礼しましたわ、さすが大企業のえらいさんまでやった人。勉強になるええ話をいっぱい聞かせてもらいました。年金も4カ所からもらっててお金は十分あるはずやのに、リサイクルショップでソファーを値切るだけ値切った上に、まだ「あこの掛け時計をつけてー」みたいなことを言うんだそうです。まあ私も似たようなことしてますので気持ちはようわかりますわ。
「明日はどこを観光するのですか?」
宿のオッサンがこう言いますので、レンタカーを借りて阪神タイガースのキャンプを見学してから名護の方に行きますっていうと、オッサンはこんなことを言います。
「レンタカーなんか借りなくても、うちにある車を使えばいい。」
えらい親切なオッサンですわ。初めて利用した客に自分とこの車も貸すんでしょうか。気持ちは大変うれしいのですが、沖縄はレンタカーが料金がびっくりするほど安いし、またオッサンの個人の車やと気を遣うのもイヤなんで、「うれしいんですが、もうずいぶん前にレンタカーを予約してありますので。。」ってお断りしたんです。そしたらオッサンはこう言います。
「沖縄ではそんなの普通ですよ。電話一本で簡単にキャンセルできます。大丈夫です。」
そこまで言われたんで、レンタカー屋さんには申し訳ないなあって思いながら電話しますと、オッサンの言う通りでしたわ。あっさりキャンセルOK。おおらかというか緩いというか。結局翌日から3日間オッサンの車を使わせてもらうことにありました。ほんまビックリでずわ。
75歳のおっさんのおごりで「島らっきょ」と「豆腐よう」を食べさせていただきました。
この島らっきょは今回食べた沖縄料理の中で一番気に入りましたね。ええアテですわ。
時刻は20時前。ここで宿のオッサンがこんなこと言います。
「歩いてすぐのところにカラオケがあるんですが、今から一緒に行きますか?」
もう断るという選択肢はありません。歌なんて何年も歌ってませんので歌えるかどうか自信ありませんが、ついて行きます。こんなお店でした。
お店のマスターはこんな感じ。カッコええオッサンです。
宿のオッサンが言います。
「彼も同級生ですわ」
75歳のオッサン以外はみんな同級生ですわ。そりゃ1学年1200人おったら、高い確率で同級生に出会いますわな、
ここでもオッサン2人はボトルキープしてはりました。基本的にはどのお店でも泡盛はボトルキープして飲むものだそうです。ボトルキープしてない我々はオッサンのボトルを飲ませてもらうことに。
おつまみはこんなのが出されます。
この右のお豆腐は大豆やのうてピーナッツで作ったもんらしいです、ジーマミー豆腐とか言うてました。お箸でつまんでも切れなくてもっちもち。これもなかなか美味しかったです。
オッサンは歌がなかなか上手でした。すべて英語の歌。我々はとても対抗できません。お店のマスターも一緒にワイワイと飲んでますと、突然お客さんがまた入ってこられます。餃子を手土産に入ってきたのはまたまた同級生。手土産の餃子はカウンターにいる我々お客さん全員にふるまわれます。
これまた底抜けに明るいオッサンで、みんなで楽しい時間を過ごすことができました。
23時ごろ、そろそろお店を出ましてみんなでタクシーでオーナーの宿に戻ります。他の宿泊客はちゃんと到着して部屋に入ってるんでしょうかね。
宿に戻ってきますと、オッサンは「3次会しよっ」って言うてさらにワインを1本あけはりました。
17時30分から飲み続けです。さすがにオッサンも眠とうなってきたんでしょうな。日がかわる前くらいにワインを飲みほしたところでおやすみです。初めての沖縄の夜はオッサンのおかげでとても楽しく過ごせました。