先日の土日の話です。訳がありまして1泊2日でちょいと贅沢な温泉旅行に行ってまいりました。石川県の山中温泉というところです。それなりに有名な温泉街ですので、ご存知の方も多いと思います。温泉街をぼらぼら散策しておいしいカニ料理を食べて酔っ払いましたというだけの話です。
訳というのはうちの嫁ですわ。実家が富山なのですが、この年末年始にスケジュール調整ができなくて帰省できなかったんです。で、この土日にスケジュールが空いてたもんですからご挨拶に行こうということになったんです。雪が降るこの季節に車を運転しようということなど、こっから先も考えません。JRの特急サンダーバードを使うのですが、京都-富山を普通車指定席を使って往復すると往復で1人15960円もかかりますねん。高いなあって思うてる時に見つけたのが「北陸乗り放題きっぷ」というもの。京都から北陸エリアまでの往復の指定席と北陸エリア内の自由席が乗り放題のチケットで1人13800円なんです。しかもプラス2000円の15800円を支払うと、北陸エリアまでの往復にグリーン車が使えるっちゅうから、こっちの方がお得やんってことで、この乗り放題きっぷを買ったんですわ。
このきっぷで単純に富山まで往復したらそれでよかったんですが、きっぷを買ってから1週間ほどしたある日のことですわ。嫁がテレビのある情報番組、いわゆる旅ものですな。それを見て「たまには贅沢な温泉でカニを食べたい」という大胆なことをぬかしよるんです。私はカニは嫌いではないですし、おいしいと思うんですが、実はカニとかエビの甲殻類にアレルギーがあるんです。加熱処理したものは大丈夫なんですが、生のカニの殻に触れるとひどいことになるんです。身は生でも大丈夫なんですよ。そういう理由もあって、嫁の提案にはあんまり乗り気やなかったんですが、乗り放題きっぷは途中下車できるわけですから、富山に帰省する途中で加賀温泉によって温泉に入ってカニを食べることにしたんです。アレルギーのせいで、今まで本格的なタグ付きのカニを食べるという経験はなかったので、思い切って一番高級な宿泊プランを予約したんです。
土曜日のお昼。京都駅12時10分発のサンダーバード17号。
満席です。来月には北陸新幹線が開業するってことで、富山行きのサンダーバードに乗るのはこれが最後になります。来月からは金沢で新幹線に乗り換えないと富山に行けません。
“贅沢”がコンセプトのツアーなんで2000円アップしてグリーン車を使わせてもらいます。グリーン車なんてめったに乗りませんので新鮮です。
3列シートはかなり広くて快適ですな。2年前まで仕事で北陸出張してた頃の普通車には、やかましいおばちゃんがいっぱいいてましたが、グリーン車はまことに静かなもんです。連中が片道あたりプラス1000円ならお値打ちです。14時前に加賀温泉駅に到着。
たくさんの人が降りはります。みんな温泉に行くお客さんやろね。駅から山中温泉までは路線バスを乗らないといけません。山中温泉は結構遠いんです。
5分ほどでバスがやってきまして、乗ること30分。この日お世話になる宿には14時40分ごろ到着しました。
8室しかない小さな温泉旅館です。お風呂はあるのでしょうが、それ以外にエンタメ系の設備はなさそう。静かにのんびり過ごすことをコンセプトとしてるんでしょうな。それはそれでよろしい。時間も早いので、お風呂に入る前に温泉街を散策することに。
「ゆげ街道」と呼ばれるメインストリートを歩きます。最初に立ち寄ったのが酒屋さん。
地酒を売ってはるそうです。店に入りますと「試飲コーナー」というものを見つけました。
「すいません。これ、試飲できるんですね。」
ショーケースを見るかぎり、かなりたくさんの種類がありますからね。少しずつ試飲してもたっぷり楽しめそうです。
「はい、こちらが地元のおすすめになってます。」
お店のスタッフが冷蔵庫から5本ばかり取り出して並べはります。じゃあ「適当に順番に飲ませてもらいましょか」って言いますと、
「お好きなものを選んでください。こちらのものは1杯200円になります。」
こう言うて、メニューまで出されます。
試飲って、てっきり無料やと思うてました。「ほな要りませんわあ」とは言えず「五凜」というお酒を1杯いただきました。1杯言うても小さいおちょこでっせ。確かに美味しかったけど、これ試飲で1杯200円は高すぎでしょ。4号瓶1本買っても1600円。この小さいおちょこなら30杯以上は取れますよ。
美味しかったけど、ちょっとぼったくられ感があったので結局お酒は買わず散策に戻ります。次に立ち寄ったのがお肉やさん。
メディアなんかで紹介されてるのか、このあたりでは有名なお店だそうです。コロッケの1日の販売個数、何個って言うてたかなあ。すごい量の売上げがあって儲けてはるそうな。1個120円で買って食べ歩きしましたが、大きめのじゃがいもがゴロって入ってて確かに美味しかった。
さらに歩きますと「菊の湯」という公衆浴場があります。
旅館にお風呂があるんで、ここに入る気はなかったんですが、この建物の前にこんなものがあったんです。
浴場で生卵を買って、ここで温泉卵を作るって趣向ですわ。九州の別府温泉でも見かけました。私は卵が大好きですねん。せっかくなんでこれに参加することに。建物の中に入りますと入浴券の販売機で卵のチケットも売ってるんです。
チケットをオッサンに渡すと、カゴにこないして卵を入れてくれます。
これをカゴのまま温泉につけるんです。「8番」の番号札ももらえます。
出来上がるまでに40分ほどかかるそうなんで引き続き散策。まずは菊の湯のすぐ近くにある「山中座」という芝居小屋に。ここは舞台公演もあるそうですが、観光案内所として使われてるそうです。
その中でこんなもん見つけました。
40分待たなくても、ここで出来上がったものが販売されてましたわ。
さらに歩きますと、またしてもお酒屋さん。でもここはさっきの酒屋と違って蔵元みたいです。蔵元っちゅうことは、ここでお酒を造ってるってことですな。試飲できるかも知れん。立ち寄ることに。
お店のマスターに試飲できるか聞きますと、200円でできるって。やっぱり有料なんかいって思うたけど、ここはさっきと違っておちょこ1杯と違いますよ。2種類、すなわち2杯飲ませてもらって200円です。
なかなかおいしいお酒でした。おっさんのうんちくも面白かったんで、純米吟醸を1本買いましたわ。「獅子の里」という地元のお酒です。
お店を出ましてさらに歩きます。こんな看板を発見。
「飲んで健康!酢卵は店内でご自由にお飲み下さい。」だそうです。何に引っかかったかというと酢卵。卵大好きでしょ。でも卵は“飲む”もんやなくて“食べる”もんやと思います。きっと“酢卵”と“卵酢”を書き間違えてるんやと思うたんです。これは指摘しないといけないと思うて入りました。
そしたら酢卵って卵やのうて酢なんやって。酢の中に卵をどろどろにして溶かしたもんらしい。それやったらやっぱり“卵酢”が正しいのんと違いますかと聞きましたが、昔から“酢卵”って言うそうな。実際にその酢を飲ませてもらいました。10倍くらいに水で薄めて飲むそうです。高血圧なんかにもよう効く言うてはりましたが、こんなもん1回試飲したくらいでは効果は実感できません。
さらに散策。山中温泉で一番有名なお菓子の「娘娘饅頭」の本店だそうです。何って読むと思います?「にゃあにゃあまんじゅう」って読むんだそうです。
ひやかしを兼ねてちょいと見学。この店内に「こおろぎ橋」の欄干が展示してます。
さっきの書き忘れましたが、これ酒蔵の店内にもありました。店員さんに事情を聞きますと、こおろぎ橋は20年に1回架け替えがされるそうな。それで架け替えた際に4つある欄干を地元の有力者で分けるそうで、饅頭屋さんと酒屋さんがもらわはったそうな。あと2つがどこにあるか知りはりませんでしたけど。
うだうだと話を聞かせてもらったんですが、結局これはって商品がなくて、申し訳ないですが何も買わずに店を出ます。
山中温泉の名物として「あやとり橋」ってのがあるそうです。一応見て行くことに。こんなのです。
あやとりで作り時の橋に似てるから、「あやとり橋」って言うんでしょうな。
紅葉の季節は最高ですって言うてはりましたけど、この時期はどうってことありませんでしたわ。ここから宿に戻る方向に歩きます。出合ったのが「芭蕉の館」って建物。
松尾芭蕉がここに1週間ほど滞在してたくさんの俳句を詠んだそうな。その資料館で入館料は200円。ここでは何でも200円です。でも芭蕉さんって全国を旅して回って俳句を詠むことを仕事にしてはったんでしょ。1週間くらい滞在した場所って全国にいくらでもあるんと違うやろか。昔は飛行機も新幹線もないでしょうしね。
菊の湯に戻ってきました。卵をつけてからちょうど45分。理論上はええ具合に仕上がってるはずです。取り出して風呂屋のおっさんのところに持っていきます。
おっさんは不思議な道具を使って卵を割ってくれます。
こんな感じに仕上がります。
これ、今まで食べた中で一番美味しい温泉卵ですわ。別に塩味をつけたわけではないんですが、温泉の味でしょうかね。ちょうどええ具合。甘くないプリンって感じです。満足。
さらに歩きます。オルゴールの館みたいなもん。
どこの温泉地でも必ず1軒くらいはオルゴールのお店があるでしょ。なんででしょうね。温泉地とオルゴールって何か関係あるんかな。
「加賀野菜・地物野菜」ってお店がありました。
中に入りました。地物の野菜がリーズナブルなお値段で売られています。
「ここは地元の野菜だけを売ってるんですかあ」
おばちゃんに聞きますと、地元で獲れないものは他府県から輸入するけど、基本的に地元で獲れるもんを並べてるそうな。珍しい野菜もいっぱいありました。野菜っちゃあ野菜ですが、こんな珍しいものもありました。心が動いてうかっと買ってしまいました。
「肉らしい豆な嫁」って商品名です。大豆で作った鶏肉のような物質だそうですが、「肉」と「豆」はわかるけど「嫁」はどう関係あるんやろ。
山中温泉をぼらぼらすること2時間弱。旅館に戻ってきました。温泉にのんびり入りますと夕食の時間。プレドニン錠を準備して命がけのカニ料理のフルコースに挑みます。ブレスレットをつけた上等のカニが次々と登場です。まずは前菜。
この前菜。メニューにこんな風に書いてますが、どれがどれか全然わかりませんねん。
特に「鰤袱紗」「ちしゃとう」「うずら松風」は実際に食べてもどれがどれかわかりませんわ。
この後にブレスレットをしたカニが続々登場です。以下写真のみ。
カニって結構脂っこいんでしょうな。そんなに量を食べられないもんです。もちろんすっごい美味しいんですが最後の方はちょっとカニが嫌いになりそうでしたわ。