最近は旅の話ばっかりですが、今回もちょいと事情があって旅に出ることになり、その途中で「軍艦島」という島を観光しましたので書いてみます。首都圏や関西でもテレビなんかでちょいちょい紹介されているんでご存知の方も多いとは思いますが、40年前まで炭鉱で栄えた島で、昨年の9月に「明治日本の産業革命遺産」の一部として世界文化遺産に推薦されることが決定したそうです。1974年に閉山し40年。そのままずっと放置された島は廃墟になってるんですが、一部を観光できるように整備されて一般市民が観光できるようになってるんです。そういうい噂は聞いておりましたんで、上陸ツアーに申し込みまして見学してきました。
軍艦島ツアーをやってる会社は5社ほどあるようですが、今回お世話になったのは「軍艦島コンシェルジュ」という会社。施設の見学料は大人300円なんですが、なんせ橋がかかってない離島ですからね。個人で島に行くというのは事実上不可能ですので、船を出してるこういったツアーに申し込んで行くしかないんです。往復の船代を含むツアー代金は3600円でした。
路面電車で「大浦海岸通り」という駅まで行きまして海の方に歩いていきますと、すぐに集合場所がありました。
受付に行きますと、まずこのような誓約書にサインさせられます。
するとこのようなチケットとパンフレットがもらえまして、船の方に案内されます。
書き忘れましたが、「軍艦島」の正式な名称は「端島(はしま)」と言います。パンフレットの写真を見ればわかると思いますが、島全体が軍艦みたいに見えることから「軍艦島」と呼ばれるようになったそうです。たしかに軍艦に見えます。
ツアーで使う船はこの船。「マーキュリー」という名前です。
1階が船室で、2階のデッキにも40席ほど席が用意されてますが、いいお天気のこの日は当然2階のデッキの方から席が埋まっていきます。私が乗り込む頃には2階は満席でしたので1階の船室に案内されます。
10時40分の定刻にマーキュリーは出航。桟橋でスタッフが大きく手を振ってお見送りです。
先に書いときますが、このツアーのスタッフは全員がすごく教育されていて、すごく気持ちのいいおもてなしをしてくださいました。よう考えてるなあって感じるところが随所にありました。
軍艦島までの航行時間は30分。その途中も丁寧なガイドがあります。船内にはこんな風にモニターがいくつかあります。
船から実際に見えるものは「右に見えてまいりますのは●●●です・・」みたいに説明されるんですが、船から見えないもの見えにくいものは、このモニターに写真を出して説明しはります。
長崎三菱造船所などをガイドさんが詳しく説明してくれはります。日本帝国海軍の戦艦「武蔵」がここで造られたって言うてはりました。ちなみにもう1つの最後の戦艦「ヤマト」が造られたのは広島の呉の造船所なんですが、いずれも原爆が落とされた都市なんですね。
しばらくすると軍艦島が見えてきました。船室の汚れた窓ガラス越しの写真なんでちょいと曇ってます。
さて、ここで軍艦島の全体像をパンフレットの図で紹介しときます。詳しくは公式ホームページでご覧いただきたいのですが、こんな感じです。
上陸するための船が接岸できる桟橋は、図の下の部分のドルフィン桟橋1ヶ所だけです。ここから赤線の部分に見学用の通路が設置されてて、その途中に3ヶ所の見学広場が作られてあります。この3ヶ所でガイドさんの説明があるんだそうです。島の内部の建物は崩壊寸前の状態だそうで、あまりにも危険で入れないそうな。見学できるのは図の左側のわずかな部分だけということになります。ですので、島に上陸する前に、まず島の右側を船上から見学するために船が周遊してくれるんです。これが島の西側、図で言うと上から下方向に撮った写真です。
防波堤が東側に比べて高くなってるのがわかりますかね。やっぱり西側は台風が来るんだそうです。見える建物は炭鉱労働者の居住施設。マンションですわ。この時代は炭鉱は何より優先されたんだそうで、台風などで高い波が来ても炭鉱が守られるように、島の西側にあえてマンションを建設したっていうてはりましたわ。
島の西側を周遊しながら、見える建物1つ1つを解説してくれますと、船は一旦島から離れて沖の方に行きます。何をするんやろって思うてたら、パンフレットの写真にあるような風景を見てもらうそうな。そのスポットから撮影した写真。
パンフレットの写真に似て軍艦に見えます。5月に言った別府のなんとか地獄のインチキパンフレットとは違いますなあ。CG加工してないちゃんとした本物の写真がパンフレットに使われてるみたいです。
船の右側の席に座ってる人も左側の席に座ってる人も写真を撮れるように船の向きを180度変えてくれるのですが、海上で180度転回するというこの技術がなかなか難しいそうで、これが上手にできると操縦士はうちの会社だけやって自慢してはりました。
船はいよいよ軍艦島の桟橋に接岸。これが桟橋です。
軍艦島への上陸は1ツアーあたり1時間って決まられてるそうです。桟橋もこれ1つしかなくて、各ツアーに利用時刻がきちんと割り当てられてるそうです。桟橋に接岸できる時間は短いため、スタッフは手際よく作業をします。
この写真ではよう伝わらんと思いますが、スタッフの仕事っぷりがなかなかカッコよかった。
島に上陸しますと、こんな風に見学通路が設置されてて、第1見学広場まで歩かされます。
第1見学広場までに見た風景を写真に撮りました。似たような風景を今月ローマでも見てますわ。フォロ・ロマーノやったかな。2000年たたなくても、40年ほど人の手が加わらないとこうもなってしまうんですね。
理由はようわかりませんが、軍艦島では傘を使うことが許されないようです。でも日陰が全くないということで、希望者にはこうやって麦わら帽子を無料で貸し出してくれます。昔ながらの懐かしい帽子です。
全員が第1見学広場に到着したところで、ガイドさんが参加者の前で自らとスタッフを紹介します。
ここから軍艦島の施設の歴史などを順番に説明してくれはるんですが、やっぱりいろんな人がいてはるんですね。ちょいちょい「わしゃガイドさんの話を聞くためにここに来たんやない。写真を撮るために来たんや。ガイドの話なんか聞きたくない」って文句を言う人がいるそうなんです。ですのでガイドさんはあらかじめ「私はこれから順番に一通りの説明しますが、話を聞きたくない人は遠慮せずに無視して勝手に写真を撮りにうろうろしていただいて結構です。ただし他のツアーの人とのトラブルにならないように目の届く範囲でうろうろしてください」って言うてはりました。おお大人にそこまで言わなあかんもんでしょうかね。小学生の遠足みたいですな。
さてガイドさんによる軍艦島の施設の解説ですが、非常に要領のいい説明でわかりやすく大満足でした。全部を書くのはとても無理なんで、ポイントとなる部分だけ書きます。
この島は石炭がたくさんあるってことで、石炭を掘る施設とそこで作業する人が生活するために高層鉄筋マンションが作られたんですが、一番の課題は水だったそうな。電気はそれなりに発電できたそうなんですが、水は船で運ぶにも限界があって、運んできた水を貯水槽にためて大切に使ったそうです。写真の真ん中の建物の上の部分が貯水槽だそうです。
これは3号棟。
幹部用の住居だそうで、一般の炭鉱マンが1世帯6畳1間のマンションであったのに対して、4LDKって言うてたかな。写真にあるように間取り図をスタッフが見せてくれました。
この写真の階段は「命の階段」って呼ばれてるそうです。
炭鉱への入り口の階段だそうです。この階段をあがったところに地下に行くエレベーター乗り場があったそうで、地下600mまで降りるとのこと。600mって言うと東京スカイツリーと同じ高さというか深さですよ。狭くて真っ暗なエレベーターに乗って、降りるというよりは落ちると言った方が適切なくらいのスピードで降りるんだそうです。すごい恐怖だったそうです。私にはとても無理ですわ。
そんな恐怖に毎日さらされていたため、毎朝に現場に行くときに「夕方にこの階段を自分の足で歩いて降りられますように」と願ったことから「命の階段」って呼ばれてるそうな。
これが30号棟の背中の部分。中身はスタッフが持ってる写真のようになってるそうな。
これが日本最古の7階建ての鉄筋コンクリートの高層マンションだそうな。一般の社員用の住宅なんですが、ここが映画「007」の23作目「スカイフォール」でロケ地に使われたって言うてはりました。でも実際は危険なんで、俳優は実際には来ないでここで写真だけを撮って、ロンドンで映像を合成して作ったって言うてはりました。ただ、日本の映画も何かロケやってるそうでしたよ。三浦春馬さんが主演やって言うてました。
これは何号棟やったかなあ。
建物の屋根なんですけど、前の日は普通の状態やったのに、この日になって屋根が崩れてるんです。軍艦島の建物は現在進行形で崩壊してるそうです。建築学会の人の検証では、これらの建物は計算上は5年前に完全に崩壊してるはずなんだそうです。写真で見せてもらったんですが、基礎の部分が塩害のために、数本の柱だけになってるようです。
これは25mプールだそうです。
中にある石というか岩は、プールの壁が崩れたんではなくて、波が海から運んできたもんだそうです。ちなみにこの防波堤が崩れたのも波の力によるものです。
東日本大震災で津波が建物を飲み込む映像を見るまでは、波の力で防波堤がこないなったって説明しても、ほとんどの人は信用してくれなかったそうです。
上陸時間が残り少なくなったところでガイドは終了。写真撮影タイムです。
スタッフがみなさんの記念写真を撮ってくれます。私はと言いますと、ガイドさんについてとっとと船に戻ります。帰りは2階席に座りたいもん。
ツアー参加のお客さんはみなさん優秀で、ちゃんと決められた時刻までに船に戻ってきまりました。往きと同様にスタッフが手際よく作業をしはりまして船は定刻に出航。やっぱり2階のデッキの席は気持ちいいですな。さわやかな風を受けながら軍艦島を後にします。
帰りの船の中でも抽選会なんか開催されたりで楽しませてもらいました。乗船記念って言うて、こんなしおりをもらいました。
裏にスタンプを押してくれるんですが、3個集めると無料乗船券をもらえるんです。でも最高の天気の日にこうやって来てるんですから、また来たいということはないですわなあ。
これは女神大橋。
往きは船室からでしたのできれいに見えませんでしたが、2階デッキからですとこんなにきれいに撮影できます。3600円で2時間半のツアーですが、大満足の内容やと思います。