今年の冬は寒い冬になるって言うてましたけど、今週になって京都は急激に冷え込んできました。真冬並みの寒さです。先週までは平日の朝でも観光客で溢れかえっていた京都駅も、寒さのせいかどうかは知りませんが、急に人が少なくなったように思います。京都もいよいよ紅葉ムードからクリスマスモードに変わりつつある11月の最終週です。
今日の仕事の出張先は兵庫県の丹波の山奥です。夕方17時30分に行かないといけませんが、これが近いようで遠いところなんですわ。京都から80kmくらいのところなんで車を使うと1時間半くらいで行けるのですが、電車の場合は北の福知山を経由するか、一旦大阪に出て尼崎を経由するかしかありません。その電車も1時間に1本しかありませんし、乗り継ぎもサクっといくとは限りませんので、タイミング悪いと3時間近くかかってしまいます。携帯のNAVITIMEで検索しますと14時30分に二条駅発の特急に乗れば余裕で到着できることがわかりましたので、前の仕事を上手に終わらせて何とか予定の特急に乗ることができました。
その目的地の最寄駅は「石生」という駅から3kmくらいのところです。私もこの仕事を10年くらいやってますんで、近畿地区にあるJRや私鉄のほとんどの駅を知っているつもりですが、この「石生駅」は見たことも聞いたこともない駅でしたわ。まず駅名が読めないことに困惑しましたわ。
二条駅の「みどりの券売機」で切符を買うのですが、機械が目的地の駅名の最初の1文字を入力せいって言いよるんです。たぶん「イ」やろうって思うんで「イ」って押してやったら、「イ」で始まる駅は300以上あるんで、今度は2つ目の文字を入力せいって言いよるんです。素直に読んだら「シ」やろうから、「シ」って入力したったんです。それでも40個くらい候補が出てきたかなあ。1つずつ見たんですけど「石生」ってボタンが出てこないんですわ。
最初の2文字が「イシ」ではないようなんで、元の画面に戻って、今度は音読みで「セ」、「キ」って入力してやりました。でもやっぱり候補に「石生」は出てこないんですね。「石」という字、他にどう読むか。「石灰」にあるように「セッ」とも読みますなあ。「セツ」と入力してみたんですが、やっぱり出てこない。あとは「ジャク」や「シャク」なんてのも試しましたが、やっぱり出てこないんです。そうこうしてるうちに後ろにお客さんが並びはじめましてプレッシャーをかけられます。
電車の発車まであと4分しかなく、駅員さん呼んでるヒマはありませんので、やむを得ず1つ先の「柏原駅」までの切符を購入しました。長距離の1駅くらいなら値段変わらんやろうからね。ちなみに「柏原」も読みにくいですよ。これは知ってましたから入力できました。「かいばら」と読みます。
特急を福知山まで乗って、そこからローカル線の各駅停車に乗り換えること30分。目的地の最寄駅「石生駅」に16時20分ごろ到着しました。1つ前の駅を出るときの車掌さんのアナウンスに耳を澄まします。
「次は、いそう、いそうです。お出口は左側です。・・・・」
「いそう」って読むんですね。言われてみれば読めないこともない。
ローカル電車ではありますが、これが途中の市島駅から学校帰りの高校生が山ほど乗ってきて車内はパンパンなんです。そりゃそうです。1時間に1本しかない電車で通学してるんですから、授業が終わった生徒はだいたいみんな同じ電車に乗りますわ。ちょいちょいこういう光景には出くわすんですが、高校生の男子と女子ってこうも違うもんかなあといつも思います。
女の子は制服であっても、アクセサリーなんかつけたり化粧もしたりで、いい悪いは別にしてとにかく全力でおしゃれをしてます。一方の男の子はと言いますと、一言で言うと「だらしない格好」。シャツはズボンから出してるし、そのズボンはわざとなんでしょうがずり落ちてるし、髪の毛はボサボサの寝起きみたいやし。1人や2人やないですよ。ビシっと制服を着ている男子はほとんどいませんわ。会話の内容も男子と女子で全然違います。簡単に言うと男子同士の会話は幼稚ですわ。小学生同士の会話なんかの方がレベル高いと思いますよ。
さて石生駅はほぼ無人駅でした。「ほぼ」というのは一応電気がついてる小さいブースがあったんでおそらく誰かはいてはるんでしょうけど、改札業務はされてませんでした。券売機もなかったんで乗るときはどうするんやろと思いますね。これ駅舎。
西口の駅前にはロータリーがあって、バス停があるということはバスもあるんでしょうが、そんなにうまい具合にバスは来ませんわ。タクシー乗り場もありますが、客待ちをしてるタクシーはいてません。
さあ、とりあえず仕事の約束の時間の1時間前に駅に着きました。このまま駅前にタクシーがやって来なかった場合には、目的地までの3kmを歩いていなかいといけません。私の歩く速度は1km10分ですから、まあ17時に歩き始めれば間に合う計算です。ということは17時まで30分の余裕がありますので、例によって駅前をぼらぼらと探検することにしました。
まず目についたのが駅前のコレ。
「日本一低い中央谷中 分水界の通るまち石生へ」
恥ずかしながら「分水界」って言葉をよく知らないもんで、何のこっちゃいなあと近くにある看板を読みますと、だいたいわかりました。
「分水嶺」ってのは知ってますわ。「分水嶺」は文字通り「嶺」にあるもんですが、まあ簡単に言えばそれが「嶺」じゃないところにあるから「界」っちゅうわけです。近くに「分水れ資料館」ってのがあります。平日の夕方の17時前なんで開いてるかどうかわからんけど、面白そうなんでちょっと行ってみることに。資料館までの距離は800mほどですので、行ってさくっと見学して帰ってくると、ちょうど30分ほどのはずです。
道中の景色。「ザ・田舎」って感じの風景です。
この写真の小川は「高谷川」って言います。この川沿いの道を800mほど行きますと「水別れ公園」に到着しました。公園の名前は「みわかれ公園」と読みます。
この右に資料館がありました。
残念ながら16時30分で閉館。しかも入場料がかかるんで見るのはやめました。付近をうろうろしてますと、この高谷川が2つに分岐してるところを発見。
これわかりますかね。写真の左から川は流れてきて、分岐部で右と手前に分かれてるんです。この右へ流れる水は70km先に瀬戸内海へ流れ込むそうです。そして手前に流れる水はやはり70km先に日本海に流れ込むそうなんです。分水界の意味はわかりましたんで理屈では理解できるんですが、にわかに信じられません。ついさっきまで一緒のところを流れてきてた水が、この分岐部で右に行くか手前に行くかのわずかな差で、その将来の行き先が瀬戸内海か日本海か変わるんですよ。何か人生を見てるみたいですわ。
こうして写真を撮っていますと、遠いところから何から声がします。
「兄さん。ちょっと兄さん。」
振り返ると50mほど離れたところから60歳くらいのおっちゃんが声を出してます。周りには誰も人はいませんので、「兄さん」は私のことのようです。
「兄さん、どっからきはったん?」
声をかえてもろてますんで、おっちゃんの近くまで近寄っていきました。
「いや、仕事で京都から来てますねん。」
こう答えますと、
「これ、面白いやろ。ちょっと待っとりや。今資料あげるからな」
わざわざ車に戻ってトランク開けて、中にある茶封筒からプリントを1枚出してくれました。こんなのです。
何かの雑誌に掲載しはったんでしょうな。「このあたりのええとこ案内人」なんでしょうな。この分水界を強烈に宣伝してはりました。実際にこの付近を案内しながら分水界について詳しく説明してくれました。今まで歩いてきた高谷川沿いの道路の中心が、ちょうど分水界になってるそうです。この道路の中央。
逆方向の写真。
この道路の中央から右に降った雨は日本海に行きますが、左に降った雨は瀬戸内海に行くっちゅうわけです。この道路の公園から1250mの区間が嶺から下りてきてる部分で、日本で一番低い標高にある分水界だそうです。標高95mだそうです。
おっちゃん、話を始めたら止まりません。こっちゃ仕事があるんでゆっくりしてられませんから、話ほどほどに御礼を言うて駅に戻る方向に参ります。
駅近くの国道の「水分れ」交差点でも表示が。
さて、時刻は17時前。30分以上ありますのでこのまま3km弱を歩くことに。ちょっと早い歩きすれば余裕でつけます。知らない町を写真を撮りながら歩くのも楽しいもんですが、この時期は暗くなりだしたら一気ですね。5分もせんうちに真っ暗になりました。景色を楽しめません。田舎の国道に特に面白いものはありません。写真に撮ったのはこれだけ。看板屋さんの看板です。
「今、選挙前で忙しいんやろなあ。今回の選挙は政党乱立で儲けはるんやろなあ。」
田舎ですねえ。選挙関係が看板屋さんのメインの仕事なんやろね。
てくてくと歩きました。時間的にそろそろ着いてもおかしくないんですが、着くような景色やありません。暗くなった田舎の道を1人で歩くのは何とも寂しいもんです。
そして右に高速道路の高架があるのを見て、道を間違えてることにやっと気がつきました。1つ手前の道路を左に曲がれば目的地に着いてたんですが、うかっとまっすぐ行ってもうたんです。残り時間は12分しかありません。手元の地図をよくよく見て、今自分のいる位置を確認し、このまま高速道路沿いにまっすぐ行って信号を左へ1kmほど行けば目的地に着けると判断しました。ちょっと急ぎ足です。
するといやらしいですなあ。この高架の下のところに隠れるようにして警察が取り締まりやってますねん。一旦停止かシートベルトか知らんけどこっちから来る車を見張ってます。まあ私は歩きやから何も心配はないんですが、取締りしてる風景って何かイヤですなあ。でも今の状況でこれは幸いです。自分の判断が間違ってないか確認することにしました。間違ってなければ絶対に17時30分に間に合うんですが、次に間違いをしてしまうと完全アウトです。貴重な12分のうちの約1分を使って警察官に道を聞くことに。
「取締り中にえらいすんまへん。この場所、この地図でいうとココでよろしいですなあ?」
恐そうな感じのおまわりさんでしたが非常に親切に教えてくれました。
「ここをまっすぐ行って、信号とこ左へ・・・。これ、結構距離ありますよー。」
信号まで行って左曲がりますとこんな景色。やっぱり寂しい。
危なかったですが、10分歩いてなんとか仕事に間に合いました。