昨日に引き続いて、しまなみアイランドライドの帰りの話をちょっと書いてみたいと思います。いつものようにあんまり考えんとダラダラ書いてたら結構な長さになってしまいましたわ。過去最高の長さかも知れませんが、どうかお付き合いを。
14時すぎにイベント会場から駐車場までみんなで戻ってきまして、若いもんはこの後「尾道ラーメン」を食るとか何とか言ってましたが、私は80kmではちょっと走り足りない感があったんで、彼らとは別行動でもう少し自転車で走ることにしました。ちょうど手ごろな距離のところに映画「崖の上のポニョ」の舞台となったと言われている鞆ノ浦がありましたんで、そこまで30kmほど走るつもりでいたのですが、心配なのはお天気ですわ。だいたいこの日も雨が降ると言われてたところが何とかもったという感じ。仮に今日を何とか持ちこたえたとしいても明日は朝から台風に違いないと思ったんですわ。行けるけど帰れない。こりゃ困るんで直接鞆ノ浦に行かずに、尾道から福山駅までの25kmを走って、福山駅の地下の駐輪場に自転車をとめて、駅からバスで鞆ノ浦に行くことにしました。そうすれば帰り雨降ってもバスで駅まで戻って、駅で自転車を分解して、そのまま新幹線で帰れるっちゅうわけですわ。
後から考えれば、別に映画のポニョを見たわけでも興味があるわけでもないもんが、バスまで使ってわざわざ行く必要はなかったのですが、いつものことながら「とりあえず行った」という実績が欲しかったんですなあ。飲み会かなんかの時、もしみんながポニョの話題で盛り上がろうもんなら、「わしゃなあ、この映画の舞台になった鞆ノ浦に行ったことあるんやでー」と自慢にもならんようなこと言いたいだけのことで寄り道することになりました。目的はこんなくだらんことでしたが、結果的におもしろい経験ができました。
約1時間かけて福山駅まで走りました。思ったより暑く、さすがに最後のほうは疲れが出てきましたわ。でも同じようなこと考えてる人いてるんですなあ。国道2号線をイベントのゼッケンつけた人が走ってるのを何人かみましたわ。彼らも物足りなかったんでしょうかね。駅について自転車をとめたらすぐにバスが来ましたので乗り込みました。
バスに30分ほど乗ると、鞆ノ浦に着きました。道中ののどかな風景はなかなかよかったです。何枚か写真に撮ったのですが、写真だとこのいい感じがどうしてか伝わらないんですねえ。おそらくのどかな景色の中にバスの乗客から醸し出される独特の雰囲気とかサウンドなんかが融合してハッピー感が生まれるんだと思います。ここはあえて写真を貼りません。到着地の写真のみUpです。
まあポニョの舞台となったと言われるんで、付近をぼらぼらと散策してみました。基本的には漁業の町なんでしょうね。いたるところに魚屋さんがありました。よく海辺の町にある“○○お魚センター”みたいなんではなく、商店街にあるような小さな魚屋さんが数多く点在してるんです。自分ところで獲ってきた魚をそのまま並べてるんでしょうなあ。お客さんもほとんどが地元の人です。まさに“地産地消”ですわ。
ところが、いくら歩き回ってもポニョをイメージさせるようなもんがありません。もし映画を見たことのある人であれば、いつくかの景色をみて「この風景はあの場面だ」とか言って感動するんでしょうが、なにせ映画見てませんから。まあ近いうちにWOWOWで放映されるのを待って映画を見てみようと思うてます。
さて時刻は16時すぎ。今から福山駅に戻って福山の街で遊んで帰ろうかとも思ったんですが、せっかく鞆ノ浦まで来たし、魚もおいしそうだし、ここで泊まれる手ごろな宿があるなら泊まっていこうと携帯電話で検索しました。そしたら近くで空いている宿がいくつかありました。その中にひときわ興味を引く宿が・・・
「人生観が変わる宿 ここから」
値段もびっくりするほど高くないし、食事もおいしそうな魚が写真に載ってる。ただ他の人の口コミをみると賛否両論、いくつかネガティブな感想もありましたが、一人だしおもしろ半分で予約しました。予約してから気づいたんですが、旅館の場所は仙酔島という離島にあるんですね。鞆ノ浦から渡船で5分で行けるそうです。早速渡船乗り場に行きました。
チケットは往復で240円。とりあえず片道だけ買おうと販売機のボタンを探したんですが、往復しか売ってない。当たり前か。片道買う人は永住する人ですわ。「いろは丸」という小さい船が既に待機してます。
中には坂本竜馬の写真があり、いろいろうんちく書いてありましたが、どうも私には坂本竜馬の魅力がわからないので、うんちくを読んだんですけど印象に残ってない。なんかこのへんで坂本竜馬の乗った“いろは丸”という船が別の船と衝突して海に沈んだっちゅう話で、その時の鉄砲がどうのこうのと議論がされてるようなこと書いてあったように思いますわ。興味ある人はインターネットで調べておくれやす。5分ほどで仙酔島に着くとあるいてすぐに看板を見つけました。少しピンボケですいません。、
確かに看板に“人生観が変わる宿”て書いてます。が、建物全体を見ると結構古い建物。そして見つけました。建物の4階くらいのところに別の看板が・・・
「INTERNATIONAL HOTEL NEW KINSUI」
日本語に直すと「新きんすい国際ホテル」ですがな。昨日に続いてまた名前に「国際」がついてるホテルに泊まることになりましたわ。
あの、昨日のBlogで書き忘れました。前日の尾道国際ホテル、期待を裏切ってと書きましたが、最終的にはやっぱり期待通りの「国際」ホテルでしたわ。とにかく客室の設備が古いのと部屋中がタバコ臭い。雨降ってたんですが、窓を開けて空気清浄機Maxに入れて寝てますねん。おそらく今日も同じような部屋に泊まらないといけないのだろうと、この時点で覚悟は既にできてます。逆にハード面が悪い分をソフト面、例えばおもてなしとか料理とかが充実してるんだろうと、ここはポジティブシンキングで行きます。
ロビーに入りました。予想とは違って極めてきれいで、スタッフの方が丁寧に対応してくれます。でも騙されてはいけません。尾道国際ホテルのロビーも極めてきれいで、スタッフの対応も最高でしたから。ロビーのソファに案内され、まずは柑橘系のジュースが出てきます。何でも疲労回復に効果があるそうな。そこで宿泊カードに名前、住所、電話番号、生年月日などを記入するよう言われます。前日もこれと同じようなシーンを記憶してます。前日は9月17日で誕生日の前日でした。でも今日は9月18日です。まさにジャスト誕生日です。「次の日が誕生日!」というのとは迫力が違います。で、同じことを言ってみました。
「これー、生年月日を書くということは誕生日に何か特典があるんですかねえ。実は今日がまさに誕生日なんですけど・・」
こう言うてやりました。ここのスタッフの対応は尾道とは違います。「おめでとうございます」などと言うお祝いの言葉は述べよりません。
「本当ですか?なぜ誕生日に1人でこんなところへ来られたんですか?」
スタッフからの思わぬ反撃に、何と切りかえしてよいものか戸惑いましたわ。
誕生日に一人でここに来たらあかんのかいと言いかえしてやりたいところでしたが、ここは正直に答えました。日本語がおかしい上に、雰囲気を出すためにあえて“、”を入れてないので読みにくくてすいません。やや早口で一気に棒読みすると、この場面の雰囲気が出ます。
「いやぁ、もともとしまなみアイランドライドっちゅうイベントがあってその帰りにポニョの舞台の鞆ノ浦寄って帰ろうとわざわざここまで来たんやけどポニョらしいもんがおらんかったんであっさり帰ろう思うたんけどせっかくここまで来たんやし魚がおいしそうやしおいしいもん食わせてくれる手ごろな料金の宿があるんやったらここで泊まって帰ってもええなあと思って携帯いじってたらここが出てきて宿の名前が面白いかったから来たんですわぁー。」
最後の「来たんですわぁー」のところでややリタルダンド、ゆっくり発音して最後はややのばす感じです。後になってから何故このスタッフがこんなことを聞いたのか理解できましたけど、この時点ではちょっとびっくりしましたわ。
さて、チェックイン手続きが終了し、お部屋の鍵もいただき、お風呂や夕食の説明もしていただいたので部屋に向かいます。期待通りの部屋でした。
部屋は何の装飾もなく非常に殺風景です。電話は指でダイヤルを回すタイプのもの。携帯の充電をすべくコンセントを探しましたところ壁にはありません。カーペットの下から無理やり配線をひっぱり出した感じのコンセントがベットの下にありました。写真には写ってませんがトイレがすごい。水が勢いよく流れないタイプのものでした。テレビも時計も設置してありません。ただ窓からの景色は最高です。
まあ想定内のことですし、何よりもうれしかったのことが部屋がタバコ臭くないこと。これだけで十分満足ですわ。とりあえず旅の疲れを流しにお風呂に入ります。露天風呂ではなかったですが十分立派な大浴場でくつろげました。風呂上りに身体を拭いて浴衣を着ているときに初めて気がつきました。洗面所にこうかいてあります。
『真玉泥中異』
“しんぎょくでいちゅういなり”と読むそうです。横にさりげなく「本当に輝く玉は泥の中にあっても輝きが違う」と書いてあります。本物は環境に左右されずどこにいても異彩を放っているものだということですかね。これを見て何となくこの宿のコンセプトが見えてきました。昔の仏教の教えとか偉人と言われる人が語った名言みたいなものが、そこらじゅうにいっぱい貼られてるから、それを見た客が「人生観が変わる宿」って言うてんにゃなと想像しましたわ。そう思うと夕食までの間の時間、館内をぼらぼらする時にそこらに書いてあるものを意識して見るようになります。再度ロビーに戻ってみました。こんなもんがいっぱいありました。そしてこの宿のコンセプトが、またチェックインの時になぜスタッフがあんなことを聞いたのかもとてもよく理解できました。
実はこの仙酔島というところは「パワースポット」として有名な島だそうです。いろんなうんちくが書かれてましたけど長くなるのでここでは書きません。この宿のホームページにコンセプトが書かれてましたんで、このリンクをみておくれやす。
http://www.sensuijima.jp/kokokara/concept.html
要するに人生で行き詰ったり、悩んだり、あるいは今までの自分を何かしら変えたい、新しいスタートを仕切りなおしたいという人が訪れるという宿だったんですわ。チェックイン時に「なんで誕生日にひとりでここに来るねん」って聞いたスタッフは、きっと私が何かしらの大きな心の傷を持ってここに来たに違いないと思ったんでしょうなあ。ツアーの帰りに何も考えんとたまたま寄っただけのおっさんやのに。館内に時計がなかったり新聞がなかったり、もちろんテレビやパソコンがなかったりするのも理由があったんですね。この宿では時計や新聞までも「雑音」であると書いてありましたわ。こんなゴミ箱がおいてあります。
ロビーには本がたくさん置いてあります。ほとんどの本はいわゆる“成功者”と呼ばれる人から寄贈されたものだそうです。おそらく途中で何度かの挫折もあっただろう成功者はこういう本を読んでましたということですわ。いろんなカテゴリーに分類されてます。
“名経営者に学ぶ仕事における人間関係を良くする本”などのカテゴリーには、「ビジネスコーチング」とか松本幸之助の「人を動かす経営」、もしドラで有名になったドラッカーの「マネジメント」とか「成功の法則」というようなみなさんも容易にイメージできる本がたくさんあります。その他「成功者が語る365の珠玉の名言」とか「達人たちに生きるヒントを学ぶ」みたいなタイトルで、うかっと飛びついて読みたくなるものがたくさんありましたわ。でもちょっと変わった本もいっぱいありました。例えば“感性を磨きたい人の為のコーナー”なんかに「原色日本の美術」なんて本がずらっと並んでます。これはわかるんですが、その下にどういう訳か「西遊記」さらには「失楽園」なんて本も入ってます。感性磨くために成功者はこんな本も読んでるんですかね。あとは“心の病に効くコーナー”のようにより具体的な悩みに対応する本もたくさんありました。雑音のない環境でこれらに触れ合って、何を感じて欲しいあるいは変わりたい自分に気づいて欲しいというのがこの宿のコンセプトのようです。
さて食事ですが、キャンプ場みたいなところでおいしいものをいただきました。おそらく宿泊客の全員ここに集められて食事をするのだと思いますが、見るとお客さんの多くは若いカップルか女の子同士の2人組or3人組です。確かにこども連れの家族でわいわいという組とかおっさん連中の組はありません。何も知らずにふらっと1人で来てるおっさんは私くらいです。長くなるので料理の中身の話は省略。おいしかったとだけ書きます。
さて食事会場が20時30分で終わりますと、スタッフから誕生日プレゼントがありました。21時から開店するホテル内のバー「酔仙人」で使える半額券です。バーのマスターと語ることで人生観が変わるかもと言われました。ほんまかいな。
「バーのマスターが何かありがたい話とか説教とかされるんですかね?飲みに行けば人生が変わりますかねえ」
と少し酔いが入っていることもあって野暮な質問をスタッフにしてしまいましたところ、
「説教とかはありません。普通のバーです。また人生は変わりません。人生観は変わるかも知れません。」
と冷静に正確にお答えいただきました。また1本取られたって感じですわ。確かに人生まで勝手に変えてもらっては困ります。大変興味あったんですが、食事時に結構お酒もいただいたこともあり、Barに飲みに行くのはやめときました。逆にこんな機会でもないと本なんかゆっくり読まないので、ロビーで本を読むことにしました。ちなみに翌朝撮影したBarの写真を貼っておきます。なかなかお洒落なBarです。行ってみたかったですけどね。
ロビーにはいろいろ興味をそそるタイトルの本があったんですが、何となく手にしたのは最近野田総理のドジョウで有名になった相田みつをの「にんげんだもの」。東京の有楽町の国際フォーラムのあるミュージアムに機会があれば寄ってみようと思っててなかなか行けてないので手にとって読んでみました。中身についてはいろいろ意見があると思いますが、確かに“共感”できる部分って多くありますよね。このBlogも長くなってきて疲れてきたので内容全部を書くのは控えますが、私が大きく共感したトピック2つだけ書きます。
1つ目は“負ける練習”を日頃からしておきましょうということ。長い人生において試験であれ試合であれ“勝つ”回数と“負ける”回数を比べた場合、普通の人は“負ける”回数のほうが圧倒的に多いというんです。そりゃその通りですはなあ。野球の試合みたいに勝か負けるかなら確率50%ですが、いわれる成功者というのは100人に1人とか1000人に1人が勝者なわけで、多くの凡人は99人とか999人の方にカテゴライズされるっちゅうわけですわ。負ける確率の方が圧倒的に大きいのに“負ける練習”ができてない、負けるための準備ができてないと指摘されてました。これはその通りだと思いましたわ。
もう1つ心に響いたは“のに”がつくと“ぐち”が出るという話。「誰かに××してやったのに感謝の言葉もない」というようなことですわ。インターネットでもいつくか記事が出てますが、お布施の話にはなるほどって共感しましたわ。
お布施というものは“施しをする人”“施しを受ける人”“施す物”の3つが必要で、どの1つが欠けても成立しないというものですわ。そんなん当たり前やんって思ってましたけど、よく読むとなるほどと思いましたわ。
仮に私が10000円を寄付しますと言っても、「お前なんかに恵んでもらうくらいなら死んだ方がマシや」って言われる可能性があるわけですね。また10000円を恵んでくださいと誰かにお願いしても「お前なんかにくれてやる金は1円もない」って言われる可能性もあります。また「恵んであげたいのはヤマヤマなんやけどうちも家計が厳しくて・・」というように気持ちはあっても“施す物”がない場合でも成立しないということですわ。重要なことは、3要件が揃わないと取引は成立しない、逆に成立した以上は“施しをする側”と“施しを受ける側”側が対等であるということを言うてはります。何か納得しましたね。我々はどうしても施す側の立場が上みたいに思ってしまってたところがありました。
で、この3要件が揃った上で「ムリ」と「ケチ」がない金額を設定すれば「のに」が出て「ぐち」が出るっちゅうことはないという理論でしたわ。まったくその通りだと思います。キリストはんもおんなじこと言うてはったの思い出しましたわ。「施しするのに見返りを求めてはいけない」みたいなことを聖書で読んだ記憶があります。わかってるんですが、我々みたいな凡人はつい「ムリ」をして愚痴を言ったり、見返り、例えば「ありがとう」のひと言だけでも心のどこかで期待してしまってるんでしょうね。気をつけたいと思いますわ。
宿を出発する時の最後の仕上げがこの宝船だそうです。
500円で参加できるみたいですが、もちろん私は参加してません。船に乗っているパネルには、最後に宿主から宿泊者へのメッセージが書かれてます。メモするのが大変でしたので大きく写真に撮ってきました。読めますかね?読めない場合がダウンロードして拡大してみてください。宿主の想いの全てがここに詰まっているように思います。
ふらっと立ち寄った宿でしたが、なかなかいい経験をさせてもろうた気がしますわ。ご興味ある方、人生に行き詰った方は一度行ってみてはいかがでしょうか。