随分時間がたってしまいましたが、シルバーウイークの旅の最後の話です。
吹割の滝の標高はだいたい630m。この日スタートした高崎駅がだいたい200mですので、この日は朝から6時間かけて60kmの距離を430mアップしてます。ところどころきつい坂もありましたが、平均すると1%弱のアップ率ですからしれてます。
問題はここからです。この日の宿はここから21km先なんですが、標高は1330mのところにあります。わずか21kmの間につまりは700mもアップしないといけないんです。単純に割り算しますと平均アップ率は3.3%です。平均で3%ということは、感覚的には5~6%くらいの坂道がずーっと続く感じなんですよ。5%の坂道と言えば変速ギアのないママチャリでは走るのはほとんど不可能。私の乗ってるこのロードバイクの場合でも5%は普通に持続的に走れる限界ですな。もちろん筋肉を思いっきり使ったり立ちこぎとかしたら10%の坂でも走れますが、そんなのは一瞬だけのパワーですので1kmも持ちません。前日みたいに道路沿いにJRが走っていたらズルして輪行するという手段も取れるんですが、今回は交通手段は自転車以外にありませんから、何がなんでも日が暮れる前に21km700mアップを走りきって宿に到着しないといけません。
片品村という非常にのどかな町に入りますと、坂道はどんどんきつくなっていきます。
普通の平地ですとだいたい20~25kmに1回くらいのペースで休憩するんですが、これくらいの坂道になりますと4~5kmに1回くらいの休憩が必要です。15時前に吹割の滝を出たんですが、13km走るのに90分もかかってます。ここが13km走って残り8km地点。3回目の休憩です。
時刻は16時すぎ。宿には17時に着くって言うてあったんですが、残り8kmを30分では絶対走れませんわ。夜間走行は危険で寂しいですので暗くなる前には何とか到着したいとは思うんですが、もう脚もパンパンで心臓もバクバクいうてますんで、ここで結構長めの休憩をとって体力を回復させてから再出発しようと思いまして宿に電話したんです。
「すいません。今日予約してる○○ですが、17時に到着って言うてましたけどかなり到着が遅れそうです。何とか真っ暗になる前には着くように努力しますので、よろしくおねがいします。」
こない言うたんですが、宿のおばちゃんがきついこと言わはるんですわ。17時に遅れるのは全然かまわんのやけど、夕食は18時と決まってるんで18時には絶対に遅れないように来いって。遅れたら夕食がなくなっても知らんでーって感じですわ。
夫婦で経営してるような小さいペンションですので、宿泊客全員そろって夕食タイムにぜざるを得ないんでしょうな。まあ事情はわかるけど、ここで40分くらいゆっくり休憩したろと思うてたのができませんわ。最悪自転車を降りて押して歩くってなことになった場合、歩く速さは時速6kmなんで残り8kmは80分かかる計算になります。18時まで残り100分しかありませんから、最悪を想定した場合ここで休憩できる時間はぜいぜい10分くらいしかありません。
自販機で水を買ってベンチで飲んで休んでおりますと、お店のおばちゃんがいろいろ話をしてくれました。親切にも塩分補給になるからと地元特産のお漬物をわざわざ2切れお皿に入れて持ってきてくれはりました。漬物をかじりつつ水を飲みながらおばちゃんと話をしてますと、あちこちから人が集まってきまして、みなさん非常に親切にイヤな情報を教えてくれます。地元の方言でどない言うてはったかはもう忘れてしまいましたが、意味するところは「この先の坂道は今までとは比較にならんくらいさらに厳しくなる」という意味やったと思います。あっ、方言で思い出しました。このあたりでは「とても美味しい」ということを「はげうめぇ」って言うそうです。
ちなみに高崎市に住む友達の話では群馬県の方言ではないとのこと。片品村だけの方言なのかな。
たくさんの地元民に脅されて坂道が心配になったんで、全部を歩くことも想定して体力が回復しないまま早々に出発することになりました。
しかし片品村の人はイカンわ。何も知らん旅人をビビらしたろうと思うて住民ぐるみであんなこと言いよったんと違うやろか。ペンションまでは確かに厳しい坂は続いたけど、今までとは比較にならんほどきつくはなかったですよ。勾配は今までとほぼ一緒でしたわ。途中で短い休憩は2回取りましたが、自転車を押して歩くこともなく17時30分にペンションの入り口に無事到着。
立派なコース料理でした。前菜の後に温かい料理が1品ずつ順番に提供されます。これのスタイルをしようと思うと、宿泊客全員が18時に一斉に食べてもらわんと無理ですな
さて、疲労困憊のところにお酒が入りますと、部屋に戻ったら即死でしたわ。ほんとは洗濯とかせなあかんかったんやけど、気がついたのは夜中の2時。夕食が終わって部屋に戻ったのが20時30分くらいやったと思うんで、5時間ほど意識を失くしてたんですな。それでも熟睡すると体力は回復するもんで、朝にはすっかり元気になっておりました。この日も朝一番から10kmほどだけ登り坂がありますので、早めに宿をチェックアウトして出発です。
さきほど片品村の人はイカンとかウソつきやみたいなことを書きましたが、これについては謹んでお詫び申し上げます。地元民の言う通りでした。3kmほど走ったところから、ホンマに今までとは比べものにならんくらいの坂道になったんです。残り6km地点。
宿が1330mやったんで、最初の7kmで370mもアップしてます。そしてこの先の峠の手前は2kmで250mアップって12%のアップ率ですやん。これは今までとは比べものにならん坂道ですわ。
いけるところまでは自転車乗りましたが、朝イチから筋力を使いきったらイカンので、時間も十分あることですので厳しい坂は無理せず歩かせてもらいましたわ。
そして9時過ぎにようやく峠のトンネルに到着。ここは金精峠と言うそうです。
トンネルを抜けたところから栃木県に入ります。
峠からの景色。山ばっかりです。
ここからは10%のきつい下り坂が続きます。事故を起こさないように安全運転。後ろブレーキは握りっぱなしです。でもお天気がよくで非常に気持ちよかったです。急な坂道が終わったところからは、こんな気持ちのいい直線もあります。
戦場ヶ原っていうところがありましたので寄ってみました。
歴史上の舞台なんかと思うたらラムサール条約でどうのこうのって言われる湿地なんだそうです。このあたりから滝とか川とかがいくつも出てくるんですが、どれも美しいし空気がおいしいんです。これは竜頭の滝。
既に紅葉も始まってます。知ってる人は知ってるんですね。結構たくさんの観光客が来てはりました。
さらに進むと中禅寺湖。これはたいしたことなかった。
その隣にあるのが華厳の滝です。今回のツアーではたくさんの滝を見てます。このあたりになると観光地らしくお食事処とかお土産物屋さんとかがいっぱい出てきます。
そして中禅寺湖の横をちょいちょいと入っていきますと華厳の滝を見ることができます。
で、写真を撮って戻ろうとしますとエレベーターがあるのに気がつきました。滝を見るためのエレベーターって書いてあるんですけど、エレベーターに乗らんでも今ちゃんときれいに見れたやないですか。で、チケット売り場にいた警備のお兄さんに、エレベーターに乗って見る滝とそこから見る滝とどこが違うんかを聞いたら、迫力が違いますって言いはるんです。このモニターを指さして、あんな風景が見られますって言います。
迷ったけど550円払ってエレベーターに乗ることにしました。決め手は「本日は普段の2倍の水量を流してます」って言われたことです。普段は毎秒2トンの放水量らしいのですが、この日は4トン。迫力が断然違いますって言うてはりました。
エレベーター乗り場。岩盤の中に100mのものを作ったそうな。
ここで初めて気づいたんですが、エレベーターは上に行くもんやと思うてたら下へ降りるんですな。下に降りてより滝壺に近いところから滝を見るという趣向なんですわ。
これがその写真。最初に貼った無料サイトからの写真との違いが感じられますか?
写真では伝わりにくいかも知れませんが、実際に目の前で見るとすごい迫力で感動しましたよ。550円を支払う価値は十分にあると思います。大満足です。
さて華厳の滝をあとにしまして、次は日光市内までさらに坂を下ります。この日は旅の最終日。宇都宮発15時46分の新幹線に絶対に乗り遅れるわけにいかないので、サクサクと観光スポットを回らないといけません。次は日光東照宮です。
その前にあるのが通称「いろは坂」です。テレビのニュースで紅葉の話題が出る時にしかみたことないんですが、ヘアピンカーブの連続するきつい坂で、1つ1つの坂に「い」「ろ」「は」・・いうて記号がついてるから「いろは坂」って呼ばれてるそうです。
これも知らなかったんですが、いろは坂って2本あって上りと下りそれぞれ一方通行になってるんですな。今回通らせてもらう下りルートは「第2いろは坂」って呼ばれるそうで、「な」からスタートするみたいです。これが最初のカーブの「な」。
これ、15kmほどきつい下りが続くのですが、怖くて休み休みのノロノロ運転しかできませんでしたわ。でもバイクなんかは結構なスピードで降りていかはります。自信あるんやろけど命懸けやと思いますよ。
何とか坂を下りきりますと日光市内まですぐです。お昼前に東照宮に到着。入り口のところにこんなものがありました。
標高634mでスカイツリーと一緒の高さだそうな。新潟の弥彦山にも同じようなもんありましたな。華厳の滝が1200mちょいやったんで、いろは坂で600mも重力による位置エネルギーを使ってるんです。もったいない。
日光東照宮の正面玄関。どこでもそうですが、ここも外国人観光客が多いですわ。
1300円という高額な入場料を払いまして中に入りますと、まず有名な「サル」があります。
見ザル、聞かザル、言わザル。そんな人生は全然面白くないと思いますけどね。
外国人観光客がずらっと列を作って、3人1組でこの前でサルと同じポーズして写真を撮ってはりましたわ。これも有名なんでしょうかね。「眠り猫」っていうもんらしいです。説明を読んだけどイマイチ何を言いたいのかようわからんかった。
奥の方に徳川家康さんのお墓があるそうなんですが、そこへ行くための道がきつかったですわ。
金精峠を登った私だけがしんどく感じるんかと思うたら、そうではなくて観光客のみなさんほとんどが悲鳴をあげてはりました。かなりきつい階段なんやと思います。
順路通りに進むんですが、本殿に入るところでみんな並んで大渋滞。
順番抜かしするわけにもいかず大人しく並んでますと、一定の人数ずつを中に入れて5分くらいの祈祷と解説をしてくれはるんです。撮影禁止やったんで写真はありませんが、だいたい1回に200人くらいかな。正座させられて話を聞くんですが、この話はあくまでも東照宮の解説がメインですわ。京都のお寺ですと、もちろん建物や庭の解説もあるんですけどメインは仏教の教えの話です。東照宮みたいな有名な観光寺院では、いろんなとこからいろんな宗教の人が来るので、宗教的な話はあえて避けてるのかも知れませんね。あくまでも文化財とか美術品としての東照宮の説明でした。私にとってはちょっと残念感があります。
次に入ったのが薬師堂。ここには「鳴き龍」というものがあるそうです。
ここも中は撮影禁止ですので写真はありません。龍の下で拍子木をカーンって鳴らすと、しばらくの時間響きが残って龍が鳴いているように感じるってもんです。これ、龍の下以外で叩いても鳴らないいうことを実演してはりました。
入場料の1300円はちょいと高いかなと思ったんですが、実際に見てみるとそれなりの値打ちはあったと思います。特にそれぞれの建物に施されている彫刻は素晴らしいと思います。昔の職人さんのええ仕事がよく見えます。
なんやかんやで想像以上に時間を使ってしまいまして気がついたら13時すぎ。ここから宇都宮駅までの38kmはずっと下りですし疲れも全然ないので、15時46分の新幹線には十分間に合うとは思ったんですが、自転車の乗ることに十分満足したのとランチをゆっくり食べたいという気持ちがあって、JR日光駅から宇都宮駅まで輪行することにしました。ということは、今回の旅はここ日光駅で終了。
駅前にたまたまお寿司屋さんがあったので、お寿司をつまみながらビールを飲んで、寿司屋の店主といろいろ話をして電車に乗って家路につきました。