今年はどういうわけか忘年会がたくさんありました。何をもって「忘年会」と定義するか、つまりは友達2~3人での飲み会を忘年会に含めていいのかわかりませんが、仮に「12月1日~31日の間に4名以上で開催する飲み会」を忘年会と定義するなら、2013年が5回であったのに対して、今年2014年は9回でした。9回目は昨日のスキー帰りに同級生との宴会。うちの嫁が熱発してダウンしてると聞いたんで30分だけで帰りましたから、ホントは参加したことにカウントしたらアカンのかも知れません。
昔は忘年会というと会社とか会社の得意先が中心で、いうても半分は仕事の延長っていう意味合いの方が強かったと思います。ですので楽しいはずの忘年会も人によっては憂鬱に感じる人も少なからずいたように思います。無礼講とかなんとか言わはりますが、仕事絡みの忘年会には無礼講はありえませんから、何かと気を遣わなあきませんし心からリラックスして楽しむっていうことも難しいと思います。
でもここ5年前くらいからでしょうか。会社関係の忘年会は全くと言っていいほど開催されなくなりました。今年の私の9回の宴会も全てプライベートです。会社の業績悪化のせいか、年末に公式な宴会なんかしてる場合やないという雰囲気もあって、どうしても公式な宴会をするなら年末やなくて年明けに新年会をしましょうという考え方をするようになったというのも、忘年会がなくなった理由の1つです。
確かに「忘年会」という言葉は「新年会」という言葉に比べてネガティブなイメージがありますな。本来は「この1年にあったことを全部忘れてしまいましょう」という意味でしょ。何か後ろ向きな感じがします。ですので居酒屋さんに貼ってある予約受付ポスターなんかには、「忘年会」ではなくて「望年会」って書いてあるところがちょいちょいありますね。今年を振り返った上で来年の希望を語る会って意味でしょうか。こっちの方が前向きなイメージがあります。まあ私にとってはプライベートで友達とわいわいと楽しくしゃべって飲めるのなら、会の形式は「忘年会」であろうが「望年会」であろが「ただの飲み会」であろうが全く関係ありません。
しかし大晦日ともなると、もう忘年会をしている方もほとんどないでしょうね。みなさんそれぞれの故郷で迎春準備に忙しくして、仕上がったところで家族と一緒に宴会をしたはるものやと思います。うちの場合も新年早々に新年会を自宅でやりますので、その準備を含めて部屋を片付けたりしておりましたが、想定外やったのは嫁の熱発。昨日の夜は38℃やったものが今朝は39℃にあがってます。しかもあきらかに前の日に比べてぐったりとした様子。どう考えても普通の風邪やないと考えたんで、お昼前に嫌がるのを無理やり病院の救急外来に連れていきます。幸いインフルではなかったんですが、寝込んで動けない状態ですので今日の夕方の予定はすべてキャンセルとなりました。
ただどうしても今日のうちに行かなければならないお店が1つだけあるんです。それは寺町三条のJEUGIAさん。ジュージヤと読みます。楽器屋さんです。
実は今年の春、25年使ってるチェロの弓の毛を張り替えるときに職人から言われたんです。
「この弓、ここー、ひびが入ってますね。これ、いつ折れてもおかしくない状態ですよ。」
プロが見たらわかるんですね。私は全然気がつきませんでした。
写真の撮り方が悪いのかも知れませんが、どこにひびがあるかわかりませんでしょ。拡大したらわかりますか?
この写真に黄色い矢印をつけるのにも苦労するくらいの薄―いひびです。でもこのひびのせいでいつ折れてもおかしくないんだそうです。
実は私は弓をもう1本持ってます。違うタイプのものが欲しくて8年ほど前に買ったんですが、何となく気持ちがのらなくて、ほどんど使ってなかったんです。でも古い方が「いつ折れてもおかしくない」って言われましたので、ここ2回くらいの演奏会本番では新しい方の弓を使ってたんですが、やっぱり満足度が低いんですね。11月の演奏会のブラームスのシンフォニーでは、「本番中に折れませんように」と祈りながらひびの入ったほうの弓を使いましたわ。
で、この1ヶ月いろんな人に相談したりいろんなサイトで勉強したりして、ついに弓を買い換える決心をしたんはいいのですが、弓ってむちゃくちゃ高いんです。最初にJEUGIAさんに弓を持っていって「このひびを修理してください」って言うたんです。JEUGIAさんは親切ですよ。ウソかホンマかわからんけど、一応いろんな職人さんに見てもらったそうです。でもこの部分のひびは致命的で救いようがないというのが結論でしたわ。で、こう言います。
「では、これと同じタイプの弓を買いたいんですが、どれになりますか?」
すると同じクラスのいくつかの弓を見せてくれました。その値段を見てびっくり。どれも20万円以上します。25年使った古い弓は結構いい弓だったようです。特に古い弓に似ててスタッフのオススメする弓があるんですが、それは28万円。さすがに「ほな、それもらいますわ」と言える金額ではありませんので、今日のところは一旦家に帰って改めてお店に来ますわあって帰ろうとしたらスタッフがこう言います。
「では、この弓。お取り置きしておきましょか。」
次に来たときに既に売れてしまっててはがっかりですので、そう言うてくれはったんやと思います。名前と連絡先を聞かれたところでこんな提案がありました。
「もし年内に買ってくれはるんやったら、がんばって勉強させてもらいますよ。」
関西以外の方は「勉強」ってわかりますかね。要するに値引きですわ。関西では「ディスカウント、プリーズ」は「な、ちょ、ちょっと勉強しといてえなあ」って言います。こっちが何も「勉強してえなあ」って言うてへんのにむこうから「勉強しまっせ」っていうてくる、しかも年内に買うって条件をつけるということは今月の売上げ困ってよるんやなって思います。
「で、どんだけ勉強してくれはりますのん?」
こう聞きますと「うーん」とうなりはりまして、こんなもんを提示しよりました。
「これが限界です。これ以上はどうにもなりません」
でも、結構いきなり思い切った値引きを提示してきますな。25%の68000円引きを提案してきますわ。でもここで飛びついたらあきません。年内の期限にはまだ1週間あります。この日はとりあえずこの見積もりを持って帰ります。
そして今日、12月31日がこの見積もり条件のリミット。まだこの弓を買うって決めたわけではないですけど、何本か試し弾きさせてもらって、もししっくりくる弓があったらこれに限らず25%の値引きを要求したろうと思うてたんです。
嫁を病院に連れていって待ってたら、携帯に電話がかかってきました。JEUGIAさんのスタッフからです。
「先日のチェロの弓の件ですが・・・」
こっちから出向こうと思うてたのに向こうから電話してきよります。どないしても今日買って欲しいんやろね。これはチャンス。25%よりもうちょっと値引きできる可能性がありますわ。
13時ごろに病院から帰ってきまして嫁を寝かせますと、自転車で寺町三条に向かいます。夕方は雨が降るって言うてますから早めに行かないといけません。15分ほどで到着。
中に入るとやりとりしてたスタッフがいてはりました。
「この前の弓も含めて、同じような弓を何本か試しに弾かせてもらって、しっくりいくのがあったら買いますわあ」
こう言いますと、スタッフはこう言います。
「うちの子でいいですか?」
何を言うてるのかわかりませんわ。あっけにとられてますとチェロの展示してあるショーケースを空けはります。ここでやっと「子」がチェロ本体を意味してるってことがわかりました。要するに試しに弾くチェロは自分のチェロを弾くのか店のチェロを弾くのかということですな。今から弓を3本持って家に帰って、家にある自分のチェロで試し弾きして、また店に戻ってくるって余裕はありませんので、店の子で試させてもらうことに。
チャキさんのチェロですって言うと、まあそれに近いチェロを取り出してくれまして弾かせてくれます。取り出したチェロをその場でチューニングメータを使わずに調弦しだしよるんです。
「ええーっ?絶対音感を持ってはるんですかあ?」
思わず聞きましたが、そこまではありませんって言うてはりました。でも指でポンポーンと弦をはじくだけで調整しはるんですからすごいです。
「もしかしてプロのチェロ奏者ですか?」
こう聞きますが、弦楽器は何も経験のないフルート奏者だそうな。それでも絶対音感に近いものを持ってはるんでしょうな。すごいですわ。
結局3本の弓を弾かせてもらいましたが、どれも素晴らしいですわ。3本のうち1本だけは何となく違和感ありましたが、あとの2本はどっちもしっくりきて弓の先の方でもええ音がでます。うち1本が見積もりしてもらった弓ですわ。まあ「縁」というものがありますからな。どっちでもええのなら最初に見積もりをしてもらったものにしたいですな。ってことを言いますと、
「では、先日お約束したお値段まで値引きしますけど、よろしいですね。」
もっと値切ったろうと思うてたのに商談をまとめにかかられました。ちょっと予想外。時すでに遅しって感はありますが、念のため言うてやりました。
「いや、別にもっと安くなっても困りませんけどね。」
店員さんの「よろしいですね」は「値引き額」がよろしいではなくて、「商談成立すること」がよろしいの意味やということはわかってて質問してます。さすがにこれ以上は1円もまからんって断られました。
「この子はすごく美しくて素敵な弓ですので、大事にしてやってくださいね」
本体だけやなくて弓も「子」なんですね。大事な娘をお嫁に出すような雰囲気です。連れて帰った美しい弓はこんなのです。
明日からのお正月3日間、ちょこっと出かける予定もあったんですが、もし嫁の風邪が長引けば外出はできそうにありません。そうなったらこのお正月は新しく買ったこの弓で「第九シンフォニー」の練習に没頭しようと思うてます。
今年もあのねのおっさんをご愛顧いただきありがとうございました。2015年、明るいニュースがたくさんある年になることを祈りつつ、今から紅白歌合戦の後半を見て寝ます。