今週は月1回の北陸への出張です。火曜日から今日までの3日間を金沢と富山で過ごしとりますが、ホテルでTVをつけてニュースを見てますと、朝も夜もどのチャンネルも阪急阪神ホテルズの偽装表示問題を取り上げてます。日々騒ぎが大きくなってるんやないかと思います。
単なる「誤表示」やと最初言うてはりましたが、そんなはずないですわな。おそらく最初は本当に芝エビを使ってたんでしょう。それがどっかのタイミングで安いエビで代用したら「これでもおいしいやん。お客は気づきよらへんでー。これに変えてしまえー」ってなったんと違いますか。その時にメニューの表示からもこっそり「芝」の字だけを削除して単に「エビ」って書きゃあ何も問題もなかったのに。それとも「芝エビ」って書くのと単に「エビ」って書くのとで、売上にそんなに差が出るんやろか?だいたい芝エビの味がわかる人ってどれだけいるんやろね。
これらの偽装事件、売上を上げてやろうとか高値を設定して儲けてやろうという悪意が本当にあって故意にやってたんなら、非常にけしからんことやと思います。詐欺罪ですわ。でもね。私はホテルを擁護するわけやないですけど、一連の報道のうち一部の件に関してはどちらかと言えば「そこまで叩かんでええんやないの」って思うてるんです。むしろ「オムライス食べたから金を返せ~」って言うてくるお客の方に違和感があります。偽装についてはホテルは当然謝罪をしてきつい制裁をを受けるべきやと思いますが、私はお客に返金する必要はないとすら思うてますよ。法律的にはどうなんや知らんけど。
「中華料理の世界では、大きいエビのことを大正エビ、小さいエビのことを芝エビって呼ぶ習慣があったんです」って言い訳しはったことに対して、銀座の有名店のシェフがTVに出てきて「同じ料理の世界にいるものとして情けない、絶対許せない」みたいなコメントしてましたけど、私に言わせれば「アンタとこかて徹底的に調査すれば絶対に誤表示はありまっせ」って言いたいですわ。すんません。根拠あって言うてるんじゃないんで抗議のメールとかしないでくださいね。私が言いたいのは、そもそもの「定義」がちゃんとなってない以上、認識の違いによる「誤表示」はどのお店にも必ずあり得ると思うてるんです。偽装の悪意があるかないかは別ですよ。
みなさんは知ってはるのかも知れませんが、私はそもそも「フレッシュジュース」の定義を知りませんでしたわ。新鮮なジュースのことやと思うてました。「提供する直前に果物を直前に絞ったもの」だけを「フレッシュジュース」って言うんですってね。ちなみに「ストレートジュース」っていうのも知りませんでしたけど、こちらは「果物の水分だけを利用した、外部から水分を入れて薄めてないジュース」だそうです。これって「フレッシュジュース」とどう違うのんって思いますでしょ。おそらくは「ストレートジュース」のカテゴリの中に「フレッシュジュース」が含まれるんやと思います。冷凍するなどして絞ってからの時間がたったものは「フレッシュジュース」にはならず、単に「ストレートジュース」になるそうな。
このことを調べるために「フレッシュジュース」ってググってみたら、「業務用フレッシュジュース」を販売する会社が検索にひっかかってきたんです。おかしいでしょ。提供する直前に絞らないといけないのに「業務用」が販売されてるって。で、クリックしますとこんなページが出てきました。
リッツカールトンの事件が出る前から書いてあったんか最近になって書き加えたんか知りませんけど、これがアリやとするとリッツカールトンの件も「作りたてを解凍して提供してました」で通るんと違うかな。
徳島の「和風ステーキ膳」の件。ステーキと言いながら加工肉を使用してたって偽装やと言われてますが、これも「ステーキ」の定義がはっきりしてないのが問題と違いますかね。これなんかは許してあげたらええのにってさえ思います。TVで専門家が言うには「ステーキとは厚めに切った1枚肉」だそうです。しゃぶしゃぶに使うような薄切り肉や大きなブロック肉を丸ごと焼いたものは「ステーキ」と呼んではいけないし、今回のように脂を注入したりいろんな部位を寄せ集めた成形肉のような加工肉もステーキの定義から外れるそうです。みなさん知ってましたか?私は知りませんでした。それなら「ハンバーグステーキ」って書いたらアカンのと違うんかなあ。またちょいちょい居酒屋チェーン店のメニューにある安いサイコロステーキなんかもアウトやと思いますよ。あれ成形肉を使うことが多いですからね。
もっとええ加減な表示。例えば「頑固おやじが作ったこだわりカレー」みたいなメニューってちょいちょいあるでしょ。オヤジが1人で経営する小さいお店ならありえるかも知れませんが、チェーン展開するファミレスでこれは絶対アウトと違いますか。頑固なおやじが全国にそないにたくさんいてるとは思いません。もし厨房を覗いて、可愛らしい女性がカレーを作ってるところ見たら「偽装表示や」って訴えなあかんのと違いますかね。
最初から悪意のある偽装は許せませんが、まあ商品の定義そのものがあいまいなんと、表示に関するルールが素人にはようわからんから、お店はちょっとでも商品のイメージがよくなるような付加価値がつきそうなぎりぎりの表示をしてくるんやと思います。そして何かのはずみに超えてはいけない線を越えてしまって今回みたいなことが起こるんやと思います。
ちなみに表示に関するルールってどないなってんのやろうと思うて消費者庁のHPに行ってみました。面白いですよ。細かいことやケッタイなルールがいっぱい書いてあります。そして極めてええ加減な曖昧なルールやというのがようわかります。我々消費者もこれをよう勉強して理解して騙されんようにせんといけないんですが、全部きれいに理解できる人っていてるんですかね。私はよう理解できません。
さて長くなりましたが、ここまでは前置きです。昨日の宿泊は高岡。ホテルに到着した後はいつもの居酒屋に飲みに行くんですが、そこに行くまでにお店の「表示」というものに意識してぼらぼら歩いてみました。怪しい表示をみつけたら「ほんまかあ?」って言うたろうと思うてたんですけど、怪しい表示って意外とないもんですね。
例えばこれ。金沢駅にある魚料理のお店のメニュー。
「能登直送」が赤字で大きく強調されてます。でもよく見ると「素材を盛り込んだ」と書いてますわ。少しでも能登の食材が盛り込まれてたら偽装にはならんってことですかな。何も魚が能登の素材とは書いてませんし。誤解のないように書いときますが、この店が偽装してるって言うてるんじゃないですよ。実際に店に入って聞いてませんので何とも言えませんが、大部分の食材は能登産だと信じます。
こっちの看板。「地鶏串焼」だそうです。
わざわざ「全て地鶏!!」って書いてます。これも「地鶏」の定義があいまいですわな。わざわざ書くということは地鶏でないのに地鶏と表示してる店が他にあるんかも知れません。
ぼらぼら歩きましたが、「これは絶対アカンやろう」って表示は見つかりません。で、結局いつものお店に入りまして、マスターにぶっちゃけ聞いてやりました。
「この店もメニューに新湊産とか氷見産って書いてますけど、たまたま漁に出られなかった時には他の産地の魚を使うたりすることありますのん?」
するとマスターが言うには、このあたりの狭い世界ではみんな知ってるからそんなことできないだそうな。漁がなくて入荷がない時は、別の産地のものわざわざ仕入れずに「今日はありませんわ」って言うそうです。いちいちメニューを書きかえるようなことはしないし、どうしても産地を強調したい場合は黒板に書くそうな。寒ブリとかはやっぱり氷見産を強調した方が東京からの出張のお客さんにウケがええって言うてはりました。
ただね。怪しいことが全くないかと言えばそうではないそうな。ここだけの話って言うて話してくれましたけど、例えば氷見港で水揚げされるはずのない魚が実際に(偽装ではなく)水揚げされたりすることはあるんですって。もちろん一部の業者ですが、特に東京からのお客さんには「地魚」とか「氷見港直送」とかいう文字はウケがよくて、喜んでくれはるそうです。
さてビール2本だけ飲んで店を出ます。怪しいメニュー表示を出してる店がもしあったらもう1軒くらい立ち寄って軽く飲んで帰ったろうと思いまして、駅前をぼらぼら歩いてます。さっきのマスターが言うてた通りかも知れませんが、田舎町で地元のお客を相手にするような小さいお店ではいわゆる「不適切なメニュー表示」って意味ないんかも知れません。怪しいメニュー表示を出してる店は全然ありませんわ。やっぱり都会のホテルのレストランのように厳しい競争にさらされているお店が、何とかメニューを良く見せようとあれこれ考えるから「不適切なメニュー表示」になるでしょうか。
このままホテルに戻るには早いなあ思ってるところで見つけたこの看板。これに惹かれてこの店に入ってちょっとだけ飲んで帰ることに。
見た感じ怪しげな表示のメニューはありませんでしょ。実は引っかかったのはメニューの内容ではありません。右端に縦に書いてある「スタッフとっても元気」という表示です。
今までの経験でから高岡のような小さい町の居酒屋さんで、パートやバイトのスタッフが「若い」ということはまず考えられないんです。大手資本のチェーン店なら学生さんとかいてることは稀にありますが、そうでない居酒屋の場合、店主はだいたい50歳以上のベテラン調理人、パートやバイトは近所の主婦のおばちゃんっていうケースが一般的なんです。ですので「スタッフとっても元気」というのは虚偽表示の可能性があると考えたんです。すり身揚げでもつまみながらチューハイを1杯だけ飲んで帰るつもりでしたんで、ふらっと入りました。
カウンターに案内されましてチューハイライムを注文。スタッフを見ますとバイトさんも含めて4人いてはりますが、バイト風の1人の女性は45歳くらいに見えましたが、残り3人はどう考えても60歳以上いや70歳いってるかも知れないって感じ。3人のうちのどの人が店主かはようわりません。でも看板は虚偽表示ではありませんでした。
この4人。元気か元気でないかと言われると元気なんでしょう。とにかくむちゃくちゃやかましいんです。私はカウンターに座ったんですが、となりのお客さんがこれまた私と同年代のサラリーマンでここの常連さん。右端にも常連さんらしき人が飲んではって、これらのお客さんに絡んでマシンガントークをされます。しかも話題がバラバラ。みんなで一緒の話題で盛り上がるんやなくて、それぞれがそれぞれに話をするんです。「1人ずつ順番にしゃべってくれ~」って言いたくなります。
すり身揚げを注文するころには私もすっかりしゃべりの渦に巻き込まれてます。隣に座ってる常連さん。富山名物のガサエビの唐揚げを絶賛してはりまして一緒に食べましょ言うて注文しはりました。こっちが言う前にお店のおっちゃんに言われてしまいました。
「これは間違いなくガサエビです。シバエビでもバナメイエビでもないですよ。」
ガサエビは食べたことあるんで知ってるんですが、私はエビの味の違いはようわかりません。
そんなこんなでお店の人ともお客さんとも盛り上がりまして、チューハイ1杯だけですぐ帰るつもりが1時間以上も滞在してしまいました。ビール会社の常連さんがどんどんビールを注いでくれます。ビールがなくなったら今度はお店の方から「サービス」言うて新しい瓶ビールを何本も出してくれたりもしますんで帰るタイミングが難しいですわ。誠にうれしいことではありますが、どないな店やねんと思いますな。
いや、しかし非常に興味深い話をいっぱい聞けました。飲食業界の裏側あるいはビール業界の裏側といった話でむちゃくちゃ面白いんですが、さすがにここに書くわけにはいかない内容ですわ。よう考えたんですが、非常にせまい業界で個人も特定できそうな内容なんで、オープンにするにはちょっと問題ありそうです。すいません。
1つだけ。このビール会社のライバル会社のポスターが店内にこうやってドーンと貼ってあるのに私が気がついたんです。
「このポスター、貼っといたらあかんのと違うのん?」
こう言うてやりますと、お店の人も気がついてなかったんでしょうな。「あっ、ほんまやなあ」って言うて、来週までに必ず張り替えておくって言うてはりましたわ。
「スタッフとっても元気」。都会のホテルのレストランも、偽装と言われかねないメニュー表記のセコイ工夫で差別化するんやなくて、こういうスタッフのおもてなしの視点でもっと差別化をしたらええのになあって思いましたわ。やっぱり都会では難しいんかなあ。